咬合 YEARBOOK 2016
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136別冊 the Quintessence「咬合YEARBOOK 2016」6複雑な治療の解決法咬合における前歯(切歯)誘導と犬歯誘導の重要性1山﨑長郎Masao Yamazaki東京都開業 原宿デンタルオフィス連絡先:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-1-12 東京セントラル宮益坂上4F1. 前歯誘導の重要性前歯誘導(anterior guidance) 前歯誘導とは下顎前方運動時における,上下の切歯による誘導である.前歯誘導が確立されることで,下顎前方運動時に臼歯離開(disclusion)が起こり,臼歯にかかるストレスを軽減することができる. 臼歯離開とは,下顎の側方運動時には犬歯誘導によって,前方運動時には前歯誘導によって,上下の臼歯が離れることである.臼歯離開が起こることで,臼歯にかかる側方圧が回避されるので,理想的な咬合を得るうえで臼歯離開は重要視されている.前歯部の被蓋関係1)理想的な前歯部の被蓋関係(図1a~c) Aは理想的なカップリングである.この状態は理想的な前方運動が行えると同時に,反射機能も発揮されやすい.2)許容できる前歯部の被蓋関係 Bは許容範囲だが,やや口蓋側被蓋となっている.このカップリングでは少し前方運動のパスウェイ(運動範囲)が長過ぎる.3)長期的に維持は望めない前歯部の被蓋関係 Cは過蓋咬合,Dが切端咬合,Eがオープンバイト,Fが反対咬合.これらは矯正的には不正咬合に分類されていて前方運動が行えない.4)適当ではない前歯部の被蓋関係 もっとも難しいのがGである.矯正治療においては左右湾曲と前後湾曲を付与するため,矯正治療後はアンテリアカップリングは図1cのような仕上がりになる.それは通常適当ではないが,本前歯部の被蓋関係の中ではBと同じように許容されるものであろう.BとGが対称的で,口蓋側寄りと唇側寄りになっている. 7種類のカップリングのうち臨床的に許容されるのはA,B,Gでその他は矯正治療が必要である.

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