咬合 YEARBOOK 2016
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116別冊 the Quintessence「咬合YEARBOOK 2016」5矯正における咬合とははじめに 筆者は,広範囲補綴治療でも,矯正治療でも,指標とする咬合様式に違いはないと考えている.咬合を生理的ステージに分けると,理想咬合,生理的咬合,非生理的咬合,治療咬合に分けられる(図1)1.補綴による咬合再構成治療や矯正治療は,長期咬合安定のために理想咬合をめざす.補綴治療においては,トゥースポジションが完璧でなくても,形態修正である程度コントロールできる.上下の歯の接触で咬合接触が足りなければビルドアップができる修復治療により,さらに咬合の指標に近づくことが可能である.天然歯がほとんどの矯正治療では,歯の形を足したり減らしたりすることが,補綴治療とは異なり容易ではない.そのため,既存の歯の幅径や咬頭の形態に影響され,理想的な治療ゴールを達成することが困難な症例もあるであろう.若年者であれば,成長発育という経時的変化もともない,治療は煩雑になる.とはいえ指標とするゴールに違いはない.とくに矯正治療では,歯・歯肉・歯槽骨レベルまでリポジションできるため,補綴治療では治療が不可能な顎骨レベルでも,外科矯正では変更可能であり,代表的な咬合再構成治療といえよう. 咬合再構成治療の目的は,治療により審美的にも機能的にも 理想咬合 ≒ 治療咬合を達成することであり,それは補綴治療でも矯正治療でも同じである. 本稿では,治療でめざす理想的な咬合を,顎口腔系の生理的観点から提示する.1. 顎口腔系の生理的関係から 咬合を考える 顎口腔系が生理的に安定するためには,両側の顎関節と咀嚼筋が生理的な状態で,上下顎歯が最大咬頭嵌合することが理想であり(図2),その理想の作業位として中心位(以下CRとする)の意義を理解す咬合再構成治療補綴と矯正ではどう違うのか今井俊広Toshihiro Imai鳥取県開業 今井歯科クリニック連絡先:〒683‐0853 鳥取県米子市両三柳2033

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