咬合 YEARBOOK 2016
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68別冊 the Quintessence「咬合YEARBOOK 2016」3ナソロジー緒言 1950年代に米国でMcCollum,Stallard,Stuartを中心にナソロジー(Gnathology)が発祥した1.下顎運動,特に顆頭の運動経路(顆路)をパントグラフで計測し,全調節性咬合器上に顆路を再現して義歯にフルバランスの咬合様式(Fully Balanced Occlusion)を付与すべく,技術的な改良を進めていた.1960年代になると,Schuyler2は前歯誘導の重要性について言及し,さらにStallardとStuart3~5は天然歯列の観察をもとに,咬頭嵌合位で臼歯が接触して前歯を保護し,偏心位で前歯がガイドして臼歯を保護するミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン(Mutually Protected Occlusion)の概念を提唱した.この時点から,総義歯にはフルバランス,天然歯にはミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンを適用するという咬合様式が普及し始めた3,6~8.これが,今日の咬合論の出発点といえよう.同年代に,中心位(Centric Relation)の概念と咬合採得法(ルシアジグなど)9,臼歯の中心位咬合と臼歯離開(Disclusion)の概念が定着した.さらに,1970年代になると,臼歯の咬合様式,特に咬合接触関係が精密化され,臼歯の長軸方向へ咬合圧を伝達するために,咬頭嵌合位における臼歯の点接触咬合(Tripodism)10,11および偏心位における臼歯離開の必要性が説かれ,後に,それらを達成するワクシング・テクニックがStuart,Thomasらによって体系づけられた.また,それと並行するかのように,Schuyler,Pankey, Mannら12,13が提唱したPMSテクニックやグループファンクションの咬合様式(Group Functioned Occlusion),咬頭嵌合位における面による咬合接触様式としてのフリーダム・イン・セントリック(Freedom in Centric)など,生体は精密機械ではないから咬合様式にも許容範囲の遊びを持たせるほうが生体への適応性にすぐれるという概念も派生し,ナソロジーとは一線を画して現在でもDawsonらがPMSフィロソフィーとして受け継い理想咬合像から臨床咬合像への変遷岩田健男Takeo Iwata東京都開業,デンタルヘルスアソシエート代表連絡先:〒102‐0081 東京都千代田区四番町8‐1 東郷パークビル4F

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