咬合 YEARBOOK 2016
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32別冊 the Quintessence「咬合YEARBOOK 2016」2エンド,ペリオの視点からの咬合論はじめに 「歯科治療は咬合に始まり,咬合に終わる」といわれている.実際に臨床における咬合理論は,単なる机上論ではなく歯科のすべての分野の核をなすものとして,歯内療法はもとより歯周・補綴・矯正を含めてどの分野にも深くかかわっている. こうしたなかで歯内療法と咬合は一見異なる分野でありながら,長期的な歯の保存と口腔内でその機能を回復するという観点において,咬合を安定させるという共通の役目を担っている. この2つの分野のうち歯内療法は,歯の保存という点で高いリスクをともなう最終段階の治療に位置するといえる.なぜなら,歯内療法には一歩間違えば抜歯となりかねない難症例への対応も課せられているからである.同様に咬合もまた,理想的な真の下顎位のもと機能的に十分にバランスのとれた咬合が確立されていなければ,下顎の偏位はもちろん,クリッキングや咬合病など,咬合が原因と思われる全身の不定愁訴に悩まされることになり,臨床では大変難しい対応を迫られるといえよう.とくに咬合が原因と考えられるこうした症例は,原因がはっきりしない場合,短期間に解消できるわけではないため,患者にとっては極めて深刻である.そうした全身の不定愁訴に加え歯内療法の不備が目立ったり,多数歯に渡って不適切な歯内療法がなされているような症例で治療に入る際,咬合崩壊の前兆を見極め,顎機能障害が潜在しているということを予測して治療に取り組むべきであろう. 超高齢社会の現在,この傾向は益々顕著である.改めていうまでもないが,こうした症例に対する歯科治療の究極の目標は,治療を通して真の下顎位を模索し,個々の生体とバランスのとれた理想的な咬合を新たに確立することである.その結果,患者は咬合改善によって口腔のみならず,全身の健康の回復と維持が得られるのである. 臨床では,来院のきっかけが当初1本の歯の治療神奈川県開業 平井歯科連絡先:〒214‐0012 神奈川県川崎市多摩区中野島6‐25‐1 第2フジモトビル2F平井 順Jun Hiraiエンドの視点から1

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