抜歯・小手術・顎関節症・粘膜疾患の迷信と真実
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抜歯小手術顎関節症・咬み合わせ粘膜疾患口腔顔面痛・診断全身疾患との関連151.Yuasaらの智歯抜歯の難易度分類(文献2)2.Susarlaらの智歯抜歯の難易度の事前予測に関するコホート研究(文献3)表1-1-2 抜歯前後の困難度推定の差と、各因子の解析結果(P値が0.05未満)単変量解析(上下顎)多変量解析(下顎のみ)患者背景年齢◯◯性別◯◯人種◯いびき◯解剖学的因子上顎下顎体格◯開口域◯頬の可動性◯◯歯軸の方向形態が良好術者に関する因子抜歯本数骨削除麻酔経験年数◯1.Yuasaら【研究の目的】 パノラマエックス線写真上で、智歯の抜歯が困難となる要因を明らかとする。【研究デザイン】 症例対照研究(症例とそうでない対象者を集めて比較した研究)・探索的研究・コホートを2群に分類したコホート研究。【研究対象者】 日本人(歯学部附属病院口腔外科)【群の割付け】 抜歯後に評価し、困難群20例、容易例24例の2群に分けた。【主な結果】 単変量解析(各因子の結果を1つずつ評価)では、垂直的に深い、下顎枝までの距離が狭い、根の屈曲、樽状根、水平的に頬側に位置していないであった。多変量解析(複数の因子をまとめて解析する統計学的な方法を用いて評価)は、垂直的に深い、下顎枝までの距離が狭い、樽状根であった。2.Susarlaら【研究の目的】 口腔外科医による智歯抜歯の難易度の見込み違いに関係する因子を調べる。【研究デザイン】 コホート研究・探索的研究・前向き研究(事前に計画してから治療を行った)。【研究対象者】 米国(ボストンの総合病院口腔外科)。82症例250本の智歯を抜歯した口腔外科医15名。【介入方法】 口腔外科医が抜歯の困難度を評価。【観察方法】 表1-1-2の予測因子。【評価方法】 術前の予測した困難度と術後に評価した困難度の差。【主な結果】 単変量解析で、有意に関連があったのは、年齢・性別・人種・いびき・頬の可動性・開口域・経験年数であった。エックス線写真による解剖学的位置は、見込み違いに関係は少なかった。多変量解析では、年齢・性別・体格・頬の可動性が、困難度推定の誤り(見込み違い)の因子であった(表1-1-2)。参考文献1.García AG, Sampedro FG, Rey JG, Vila PG, Martin MS. Pell-Greg-ory classication is unreliable as a predictor of diculty in extract-ing impacted lower third molars. Br J Oral Maxillofac Surg 2000 Dec;38(6):585‐587.2.Yuasa H, Kawai T, Sugiura M. Classication of surgical diculty in extracting impacted third molars. Br J Oral Maxillofac Surg 2002 Feb;40(1):26‐31.3.Susarla SM, Dodson TB. How well do clinicians estimate third mo-lar extraction diculty? J Oral Maxillofac Surg 2005 Feb;63(2):191‐199.4.Akadiri OA, Obiechina AE. Assessment of diculty in third molar surgery--a systematic review. J Oral Maxillofac Surg 2009 Apr;67(4):771‐774.  Yuasa論文は、症例数が少なく精確性が低い可能性がある。しかし、どちらの研究も計画に基づいて丁寧に行われており、結果の大きさも明確であり、確信性の程度は低いとはいえず、中等度か。しかし、本項で取り上げたのはシステマティックレビューではないたった2つの論文のため、今後の検討が必要であるが、大きくは変わらないと考えている。参考:エビデンスの確信性の程度 歯軸の方向は、智歯の抜歯の難易度に、あまり関与していない。よって、垂直方向の智歯であるといって、容易に抜歯できると考えないこと。エビデンスからいえること・わかること

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