臨床家のための矯正 YEARBOOK 2015
5/6

図1 Dr. Luis Carriere.図2a~d カリエールモーションのメカニクス.a:大臼歯部ボールジョイント,b:カスピッドフック,c:アップライトを誘導,d:ローテーションの誘導.図3a~e カリエールモーションのムーブメント.a:治療初期.b:犬歯または小臼歯から大臼歯を一塊として歯体移動する.c:第一大臼歯のローテーション補正とアップライトをする.d:カリエール装着時.e:第一大臼歯の近心ローテーションは犬歯のⅠ級関係に影響を及ぼす.製品①「カリエールモーション」の特徴 2004年Dr. Luis Carriere(図1)によって開発されたモーションは治療初期に犬歯および第一大臼歯の関係をⅠ級に改善させる装置である.従来のⅡ級是正装置との大きな違いは,治療途中に大臼歯を遠心移動し,前歯部を順次移動させるのに対し,この装置は,治療開始時に犬歯から大臼歯を一度に遠心移動させ,上下咬合関係を改善するものである.これによりブラケットによる矯正治療期間を30%程度短縮でき,また治療のメカニクスをシンプルにできる可能性をもっている.ラビアル矯正,リンガル矯正,マウスピース矯正等,どのケースのⅡ級症例の事前処置にも応用でき,マウスピース矯正の場合,事前に遠心移動をさせることにより,アライナーの数量を大幅に減らすことができる.カリエールモーションのメカニクスとムーブメント カリエールモーションは大臼歯部のボールジョイント(図2a)とカスピッドフック(図2b)へとつながるアーム部からなる.この大臼歯部のボールジョイントの動きにより,大臼歯のアップライト(図2c)と遠心へのローテーション(図2d)が初動として現れる.その後,犬歯から大臼歯の遠心移動が行われる.(図3).このとき,第二大臼歯も押されるように遠心移動していく.アンカレッジ 遠心移動には1日17時間以上のエラスティックの使用が必要になる.このⅡ級エラスティックの副作用である下顎の歯列へのリアクションを抑えるための手段が必要になる.リンガルアーチを用いた場合は,第一大臼歯の近遠心の歯にレストを設けるか,リンガルアーチの遠心部分を第二大臼歯まで延長し,第二大臼歯にレストを作成するか,舌側面にボンディングする方法がある(図4). また,下顎歯列へのアライナーの着脱が可能なケースでは,1mmのアクリル板をプレスし,下顎歯列全体をアンカーとする方法もある(図5).この場合は1mmのアクリル板を使用したい.このとき,エラスティックを装着するアタッチメントのボン図1図2図3aabbeccdd134臨床家のための矯正YEARBOOK 2015特集 成長期の上顎前突を極める 第Ⅱ部 メーカーによる商品紹介&臨床応用

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です