口腔ケア 歯科衛生士の役割を問う
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す。 その技のひとつ、「歯周インスツルメンテーション」とは、❶歯周組織検査の中の歯肉溝や歯周ポケットの測定、❷歯周ポケット内で汚染した歯根面の探知、❸スケーリング・ルートプレーニング(SRP)この3つです(SRPと歯周デブライドメントをここでは同義語とみなしています)。 歯科診療所で患者の自律的健康観を育むことを目的に予防管理型歯科を目指す場合、歯科衛生士の仕事は❶新たなう蝕を作らないこと、❷その患者の口腔内環境を守るために必要な健康な歯肉を維持することだと思います。歯周インスツルメンテーションは❷の健康な歯肉に改善するために大事なスキルとなってきます。 SRPの修練(トレーニング)については、今までにも「シャープニングテキスト」、「SRPテキスト」として出版してきました2。ここでは、それを総括し、わかりやすくまとめてみたいと思います。 シャープニングに関して、常々感じることは、シャープニングを苦手とする歯科衛生士が非常に多いということです。理由は1つ。徹底的に教える機関がないということです。研修をしているところはたくさんあります。お叱りを覚悟でいえば、徹底さが足りません。シャープニングの必要性が求められているようでそうでない。歯周病の治療のためにハンドスケーラーによるSRPがそれほど求められていないのかもしれません。私は超音波スケーラーの有効性も充分に認めていますし、ポケットイリゲーションには超音波スケーラーを必ず使います。また初期治療中、根分岐部病変のSRPには細いシャンクの屈曲したダイヤモンドチップがおおいに役に立ってくれることもあります。しかし私はどうしてもハンドインスツルメンテーションにこだわります。その理由を以下にまとめました。❶侵襲性の低いSRPを行うためにはシャープな 刃が付いたスケーラーを使うことが必須。シャー プニングの命は刃の角度と原型の維持❷歯科衛生士にとってスケーラーは仕事の道具、 医療器具であれば、なおさらのことシャープニ ングは「道具のメインテナンス・管理」と考え なければいけない❸ブラインド下で行うSRPテクニックなど、口 腔内で行う歯科衛生士の仕事はすべて感覚を研 ぎ澄ます繊細さの極みであるため、原型維持の 難しい小さな刃を研ぐという技はそのためのか けがえのない修練になる(“切れる”というこ とを求めるだけなら、優れもののシャープナー を使う方が格段に効率的と考える) 昨年の9月、NHKの人気番組「プロフェッショナル」で、=磨き職人 小林一夫=が放映されました。ipadの鏡面仕上げで世界に名を馳せた金属研磨職人の話でした。歯科衛生士のシャープニングと比べうるもなく、歯科衛生士は“研いでなんぼ”のものではありません。しかし、その精度に“こだわり抜く”という職人魂に似た何かを感じて、ひとり嬉しくなりました。マンツーマンレッスンのハンズオン、手を添えて教えることの重要性をひしひしと感じています(図6-11)。(4) 技の修練 その2 グレーシーキュレットスケーラーのマネキンによるトレーニング法は、この10数年でほぼメソッドができあがったと思っています。専用のマネキンも開発しました。指定のスケーラーを使い、デモンストレーションを手本として受講生は73図6-11 マンツーマンレッスンの必要性。

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