口腔ケア 歯科衛生士の役割を問う
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473咀嚼は第3の心臓 「噛むこと」それは心身の健康を保ち、生活機能を高め、命をつなぐための重要な習慣です。噛むことが脳機能に大きな影響を及ぼすことが科学的に解明され、記憶や認知力を向上させる有効な手段であるといわれています。 「咀嚼は第3の心臓」といわれます。第1の心臓は当然、通常の心臓で、第2の心臓は横隔膜です。そして第3の心臓が咀嚼の働きです。咀嚼は脳から咬筋にはりつく翼突筋静脈叢にとどまった古い血流を心臓に戻す役割を果たしています。そのためには、片噛みはいけません。歯全体のバランスのよい両噛みによってはじめて、均等に脳内血流が心臓に流れ、新鮮な血液が脳に循環されていきます。右の片噛みは右の脳に血栓を起こしやすく、左の片噛みは左の脳に血栓を起こしやすくします。「噛むこと」で脳血流が活発になり、中枢神経が刺激されます。そのことが全身の若返りや健康へとつながります。つまり口腔はすべての命の根源なのです(図5-2)。 ちなみに第4、第5の心臓は手と足です。健康のために歩きましょうというのはこのためです。 噛むことの効果は全身にわたります。まず、唾液の分泌促進です。唾液が分泌されることで次のように幅広い効果があります。❶自浄作用:唾液によって、口を浄化・殺菌❷再石灰化:脱灰で溶けだした歯を再度修復❸緩衝作用:口腔内のpHを整え細菌を抑える❹消化作用:消化酵素アミラーゼによりでんぷん を分解し消化しやすくする❺発がん物質を無毒化し、がんを予防4 唾液成分のペルオキシターゼ・カタラーゼ・ア スコルビン酸には解毒作用がある❻若返りに作用する豊富な消化液やホルモンの分 泌につながる。特に耳下腺から分泌されるパロ チンという物質は、美容や免疫力が高まる若返 りホルモンとして注目されている❼顔かたちを整える❽精神の安定につながる❾集中力が高まる細菌の増殖を抑え、抗菌物質で口腔粘膜を保護保護作用:口の中を潤し、口腔粘膜等を保護味覚作用:食べ物の味覚を感じやすいように味 覚物質を溶解 さらに、噛むことにより、満腹中枢が早期に刺激されるため、ダイエットの効果もあります。 何でもよく噛めて食べることのできる歯を守ること、口腔の健康を守ることが健康長寿につながるのです。図5-2 咀嚼と脳血流との関係(文献5より引用)。噛むことに関係なく心臓に戻る噛む運動で心臓に戻る海面静脈洞翼突筋静脈叢外頸静脈内頸静脈①心臓から 脳への血流脳③心臓へ戻る 静脈血

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