口腔ケア 歯科衛生士の役割を問う
2/6

図1-3 PMとNCDs*の連鎖。(注)*NCDsはWHOの用語で「非感染性疾患」と解説されていますが、歯周病VS他臓器への伝播を考えた際、「非伝染性疾患」の名称のほうがより正確に表現していると判断しました。歯周病原細菌は宿主(歯周組織)である歯周ポケットおよび周辺の組織内の微細血管を介して伝播されるため、感染による影響も大きな役割を果たしています。したがって、NCDsは歯科疾患の中で「生活習慣病」を主体として取り挙げるべきでしょう。唾液基準値の設定(サロゲートエンドポイント)表1-1 唾液検査の基準値(歯周病)●Hb2µg/mL●LDH350U/L●P.g菌0.01%●T.f菌0.05%●P.i菌0.2%生活習慣病(喫煙・肥満)糖尿病(主Ⅱ型)慢性関節リウマチ早産・低体重児出産腎不全脳血管障害心疾患がん心血管疾患(CVD)がん慢性閉塞性肺疾患(COPD)NCDsPM歯周病5と歯周医学(Periodontal Medicine、PM)の検証により歯周病原細菌のポケット内微細血管を介しての各臓器、心臓血管、脳血管、呼吸器への伝播、糖尿病、早産や低体重児出産、さらに、がんとの因果関係も明らかとなり、歯周病原性細菌が他の臓器へ連鎖することが証明され、口腔ケアの重要性が喚起されてきました。平成20年、WHO9から提起された行動計画の中では、非伝染性疾患(Non Communicable Diseases NCDs)*としてがん、心血管障害(CVD)、糖尿病(DM)、慢性呼吸器疾患(COPD)が対象に挙げられています。これらの疾患は口腔領域とも密接に関連しいることから、PMのNCDsへの対応が口腔ケアを通して大きなキーポイントになると思われます(図1-3)。 21世紀の現時点で、歯周治療の体系化はガイドライン(GL)の策定、考え方、治療法の整備化で定着し、中でも口腔ケアが継続的に実施できる概念が定着したことはすばらしいことです10。しかし、残念なことに、歯科治療は視覚に頼る部分が多く、機能的検査が形態的検査に比べて少なく、EBMを重視する医療界にあって伝統的歯科固有の狭い視野での考え方にこだわり、機能的検査なくして次の処置段階へ進む過程が多くみられます。 「予後」という言葉の定義をみると「疾病の発症や治療後の未来における形態や機能を予測する」と記載されています。科学厚生科研7により、SPT期の基準値の策定(サロゲートエンドポイント)が唾液検査値によって行われ、その結果、LD(乳酸脱水素酵素)、Hb(ヘモグロビン)、歯周病原性細菌(P.g、T.f、P.i)などの基準値が測定されました(表1-1)。このような数値目標8は、高血圧症や糖尿病などのGLと同様にSPT患者にとっても励みの目安となることから、受診者を納得させるツールとなります。数値的表示は口腔ケアへの関心も大きくするものと思惟しています。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です