口腔外科ハンドマニュアル'15
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Chapter-PARADIGM SHIFT OF DENTAL SURGERY FOR 10YEARS LATER11巻頭アトラス 10年先を見据えて 口腔外科医療のパラダイムシフト特集1:超高齢社会に対応する歯科・口腔外科医療への提言─口腔の健康が健康寿命を延ばす─インプラント治療患者と健康寿命ATLAS インプラント治療患者は外傷,先天性欠如を除けば,その多くは不適切な口腔清掃が起因のう蝕,歯周疾患による歯の喪失のために受診している.インプラント治療を受診される患者の年齢は,どの歯科医療機関でも50~60代が多い.その応用部位は,上顎では前歯部が比較的多く,下顎では臼歯部欠損,なかでも遊離端症例が多い1.また,無歯顎患者で,義歯の不安定を主訴にインプラントを希望して来院される人も少なくない.このような患者の場合,60~70代が多い.インプラント治療の予後については多くの報告があるが,インプラントの残存率は,10年で90~94%程度,20年で75~89%程度である2,3. 日本人の健康寿命の平均値は,男性が70.22歳,女性が73.62歳である4.健康寿命とは「日常的に介護を必要とせず自立した生活ができる期間」を指す.これに対し平均寿命は男性80.21歳,女性86.61歳(2013年「簡易生命表」)である.今日,われわれ歯科医療従事者側は,口腔機能の回復を図り,歯科医療や口腔ケアを通してどのように健康寿命を延ばし,平均寿命に近づけることに貢献するかが課題・目標でもある. インプラント治療を60歳で受診した患者は20年後には80歳となり,健康寿命の平均値を超える(図1).しかし,この期間はインプラント治療患者も加齢により,脳血管疾患,自己免疫疾患,心疾患,糖尿病,認知症,パーキンソン病等の疾患に罹患することが多くなる.このような疾患に罹患した患者では,要介護となって従来どおりの口腔清掃ができなくなるケースも少なくない.また要介護者は,自宅で家族等による世話を受けるようになったり,医療施設や介護施設に入居することになる人も多く,歯科医療機関への通院は困難となる5,6(図2).こうした通院が難しいインプラント治療患者への対応として訪問診療や各施設での口腔ケアが行われているが十分ではなく,またこのような患者に対する口腔ケアのシステムやガイドラインも確立していない.そのため,通院が難しいインプラント治療患者のなかには適切な口腔清掃ができていないケースがあることも渡邉文彦日本歯科大学新潟生命歯学部歯科補綴学第2講座連絡先:〒951‐8580 新潟県新潟市中央区浜浦町1‐8Fumihiko WatanabeDepartment of Crown and Bridge Prosthodontics, School of Life Dentistry at Niigata, The Nippon Dental University address : 1-8, Hamaura-cho, Chuo-ku, Niigata-shi, Niigata 951-8580高齢のインプラント治療患者への対応Correspondence to Implant Treatment for Senior Patients21

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