●矯正リテンション法における筆者推奨ガイドライン●動的矯正治療終了後の管理プロトコール3 良ければ安定までに要する期間は短縮できると考えられる. そこで筆者は,補綴が絡む矯正歯科治療を行う場合には,より仕上げにこだわるべきであると考えている.筆者の経験上,質の高い矯正歯科治療が行えた場合,保定装置の使用時間も夜間だけで十分であると考えている.実際に筆者は,ほぼすべての症例図23 矯正リテンション法における筆者推奨ガイドライン.1) 動的矯正治療終了1か月前にリテーナーの印象を採得し,歯科技工所にてブラケット部を模型上で削除しリテーナーを製作する *場合によっては,ブラケットディボンド直後にリテーナーの印象を採り,即時にクリアリテーナーをクリニックで製作する方法もある.2) ブラケットをディボンディングし,下顎前歯部舌側に固定式のワイヤーリテーナーをボンディングする(非抜歯症例では3~33~3,小臼歯抜歯症例では5(4)~(4)55(4)~(4)5に装着する).また,就寝時(7~8時間)に限り上下Beggタイプリテーナー(唇側にレジンパット付与)もしくは補綴歯科治療を予定している症例では上下クリアリテーナーを使用する.3) 保定1か月後に矯正後の動揺度の評価を前歯,臼歯ともに確認し,必要に応じて咬合調整を行う.また,開咬や骨格性III級など,初診時から咬合力が弱い患者においてはガム咀嚼を指示.4) 保定状態が安定していることが確認されたら,保定3か月以降で補綴歯科治療が可能である.図24 動的矯正治療終了後の管理プロトコール.ただし,なんらかの原因で咬合接触の低下が認められる患者には,ガムやグミなどによる咀嚼筋トレーニング指導を1~3か月行う.この場合,咬合接触が安定したのちに補綴歯科治療を開始するが,プロビジョナルレストレーションの交換は必要に応じて早期に行っても良い.CHAPTER7 矯正歯科治療×補綴歯科治療 矯正後から補綴歯科治療に移行するタイミング(図23,24)に関してはさまざまな意見がある.一般的には,矯正歯科治療から6~12か月後に最終補綴装置を装着すべきとの意見がある.この期間の意味は,矯正後の歯列の安定が得られるのに要する期間である6.つまり,この期間は矯正歯科治療の仕上がりの質に依存する.当然,仕上がりの咬合状態が◆保定装置の選択 上:クリアリテーナー(咬合力が弱い症例ではBegg) 下:クリアリテーナー(咬合力が弱い症例ではBegg)+下顎Fix(抜歯部位をまたぐ部位まで) 例 5(4)~(4)55(4)~(4)5 *筆者推奨クリアリテーナー:Zendura A(国内未承認),山八歯材工業社(国内承認) *下顎O-PRO法を行った患者は,Fix 原則不要 *クレンチング患者は,保定3か月以降を目安にスプリントへ◆使用時間 保定~1年/補綴治療中=上下顎:毎日7~8時間(就寝時)* 保定1年以上=上下顎:週1回7~8時間(就寝時) *クレンチング患者は,3か月以降に上顎スタビライズスプリントへor3~33~3まで158矯正後の保定管理と補綴歯科治療へのタイミング
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