●アンキローシスの原因と留意点が多いと報告されている. 一方,実際の矯正歯科臨床においてもっとも多く見られるのは,前歯部における外傷既往歯に認められる症例であると思われる.また,矯正中にアンキローシスした歯への対処法は,当該歯の亜脱臼,セグメンタルオステオトミー(顎骨分節骨切術)などの方法が報告として挙げられている.しかし,いずれの方法もコンセンサスが得られておらず,多くの場合,歯根吸収などを併発し,最終的には抜歯を余儀なくされることが多い(図13)18.図9a,b 矯正歯科治療から2年経過した後に,₂根尖部にデンタルエックス線透過像が認められた.冷温試験などによって歯髄組織の失活が確認されたため,根管治療を行った.筆者の経験上,矯正中に失活が認められる症例では,外傷の既往や深い修復処置が行われている歯であることが多い印象がある.本症例でも二次う蝕などは認められなかったが,歯髄に近いCR充填がなされていた.図9c MTAセメント(BioMTAセメント,モリタ)を用いた根管充填を行った.デンタルエックス線透過象に改善傾向が認められ,臨床症状も認められなかったため,根管充填から約3週間経過した後に矯正移動を再開した.図10 アンキローシスの原因と留意点.CHAPTER6 矯正歯科治療×エンド ●矯正中に歯髄の失活が認められた症例とである.アンキローシスした歯は,金属音と呼ばれる高い打診音,生理的動揺の喪失,デンタルエックス線およびCBCT所見によって歯根膜腔の異常などで事前に判定できる場合もある. しかし,部分的なアンキローシスの場合,事前に判定することがきわめて困難であり,最終的には矯正移動を行ってみないと確定できない.また,アンキローシスの原因は,先天的・外傷による局所の代謝障害などであるとの報告がある.乳歯のほうが永久歯よりも発生した件数が多く,さらに臼歯のほう1321)外傷の既往2)事前の十分な検査・説明3)部分的なアンキローシスの場合には,矯正移動前には判別困難abc歯根膜図11 アンキローシス.正常な状態(左)から,歯根膜が失われ歯槽骨と歯根が結合してしまう状態(右).
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