包括的矯正歯科治療
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b図29a,b ポイントは,歯肉に裂開(退縮)が発生する限界を見極めてギリギリのタイミングで各種O-PRO法を行うことである.図に示したように,外科手術前に歯根を唇側へ移動させることで,血餅の保持に有利な骨欠損形態を作ることがO-PRO法の肝である.これに関しても国際的な明確なガイドラインは存在しないものの,筆者が提唱する矯正患者に対するオルソ・ペリオガイドラインを示したい(図30). 本CHAPTERでは,外科的な対応にフォーカスして詳細に解説してきたが,ボーンハウジング不足以外の歯周炎の症例の多くは,非外科的なバイオフォルムの除去で対応が可能である.また,矯正患者の場合には,叢生の存在や矯正装置の装着によって通常の患者に比べてスケーラーチップ等のアクセスが困難となることがある. さらに前述したように,外科的対応においても,戦略的に歯周外科や抜歯予定歯の抜歯のタイミングを遅らせて矯正移動を先行させる必要性がある.また,抜歯予定歯であっても,矯正移動の固定源に短期間でも利用できる場合がある49.そのような状況下では,非外科的歯周管理の守備範囲を広げることが不可欠である. そこで筆者が推奨したいのが,エアーフローを用いたデブライドメント法である.EMSは同社のエアーフローを用いた方法によって通常のハンドインスツルメントがアクセスできないような部位におい図29c 下顎前歯においてはMBTブラケットを用いルートラビアルトルクを術前に入れることで,歯根間の窪みを作ることができる.その窪みをO-PRO法によって硬組織で造成することで,安定したボーンハウジングを歯列全体に構築することができる.a2 矯正移動と歯周組織121筆者が考える矯正患者に対するオルソ・ペリオガイドライン 矯正歯科治療における歯周管理でもっとも重要なことは,治療前の適切な歯周検査~矯正前の歯周基本治療と矯正治療期間中の適切な管理方法である.●O-PRO法における術前の矯正移動イメージ矯正移動と歯周組織再生療法の一連の最適な組み合わせこそがO-PRO法の肝である. また,重度な歯肉退縮が既に認められる場合(Watahikiのペリオ分類ClassⅢ)や矯正移動によって歯肉退縮が矯正開始早期に増悪していくような状態(Watahikiのペリオ分類ClassⅠ)にような場合には,事前にO-PRO P1aのように軟組織移植を用いた根面被覆術によって,Watahikiのペリオ分類ClassⅡのような状態に改善しておくことも重要である. 以上のような2ステージアプローチにて根面被覆を行う場合には,可及的に歯根膜再生(結合組織性付着)を促すためにエムドゲインを併用する.さらに,歯肉退縮の再発を抑制するために術後6か月経過した後に矯正移動を行うことを推奨している.

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