包括的矯正歯科治療
1/6

a図28a〜c 初診時口腔内写真.矯正歯科治療中に₁に重度の歯肉退縮が発生し,筆者のセミナーの受講生であった矯正専門医から相談され,当院へ来院(a).術前に下顎のブラケットをいったん撤去した.歯肉退縮は根尖部付近まで及んでいたが,幅はそれほど広くないと判断し,O-PRO P3にて改善が望めると判断した(b).CBCTと合わせて診断したところ,歯槽基底部を超えた矯正移動が起こっていることがわかる(c).d図28d〜g 初診時から術後1年6か月のCBCT.歯槽基底部には明らかな骨造成が認められる.また,唇側の皮質骨の再生や歯根膜の再生を期待させる変化が認められた.なお,再生治癒のため,この間には下顎前歯の矯正移動を行っていない.h図28h,i 術後1年6か月の口腔内写真.このように付着が大きく失われている症例では,積極的な早期の矯正移動は再生によって不利になる可能性があるため,術後はアンキローシスの予防程度の矯正力を付与するに留めた.強靭な歯周組織が唇側に維持されており,付着歯肉の幅の造成さえも認められる.ことで歯槽基底部への骨の再生しやすくする工夫を考案した.つまり,ここでのポイントは,歯肉に裂開(退縮)が発生する限界を見極めてギリギリのタイミングで再生外科を行うことである(図29).つまり,bcefgiCHAPTER5 矯正歯科治療×ペリオ ●症例2 O-PRO法によって良好な結果が得られた症例力を引き出すことができる移動様式は挺出である.しかし,挺出のような矯正移動様式は,歯冠側方向への移動だけではない.筆者は,歯根を唇側へ傾斜移動させ,歯根間に3壁性様の骨欠損を術前に作る120

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る