Chapter 5 リハビリ歯科 リハビリ歯科の取り組みとその役割動は多岐にわたる(図2)。入院患者に対する当科の介入は、主に「予防」と「治療」の2本柱を意識している。当科は一般歯科医療と同様に患者に対して、入院しながらでも歯科医院のように通院可能な環境を提供している。具体的な歯科治療として、義歯修理・調整などの補綴処置、う蝕治療や根管治療などの保存処置、著しい動揺歯の抜歯などの外科処置である。一般歯科医院と異なる点として、①患者がすべて有病者②患者の状態が非常にクリティカルな状態③摂食嚥下障害の患者に対して検査や評価・リハビリテーションを行う――の3つである。また、診療室に来られない患者は、病室のベッドサイドにて訪問診療を行うことも多い。病棟看護師や療法士と連携し、患者が離床する機会が増えてきた場合、診療室で治療できるように協力を仰ぐこともある。このように病院内での歯科治療には多職種と連携する機会が多々ある。現在、病棟での口腔衛生管理に関しては、歯科衛生士が看護師や療法士(主に言語聴覚士)と主にコミュニケーションをとり、口腔内の評価方法やケア図1 筆者の勤務する足利赤十字病院リハビリテーション科のスタッフ。方法などを協働している。当初は病棟に積極的に出向き、病棟看護師に声をかけて口腔内の衛生状態について実際の状況をその場で共有していた。病棟では看護師の業務が多忙のため、従来の口腔衛生管理は歯科衛生士が代わりに頼まれることが多かったが、現在は時間差で介入するなど、看護師と歯科衛生士とで協働することにより、良好な口腔衛生状態の維持ができている。また、食事摂取量の増加、覚醒状態の改善など、目に見えてわかる変化を共有することで、病棟内での口腔衛生管理に対する意識の向上につながっている。このように看護師と歯科衛生士が口腔をとおして距離が近くなり、病棟での口腔衛生管理はスムーズな連携がとれている。また、看護部長が口腔ケアに関して非常に理解があり、毎年看護部より新人看護師研修会に口腔ケアの講義・実習依頼をいただき、現在も継続中である(コロナ禍ではDVD研修)。当院では、口腔内の状況把握のために口腔内アセスメントツールを用いて情報共有している。総合病院内の口腔内アセスメントツールはOHAT2が多くみられるが、当院では特に看護師が簡便に評価できるTHROAT3を使用している(図3)。当科にはアセスメントツールの結果をもとに依頼があるが、今までは介入依頼が看護師から歯科衛生士に直接連絡されていた。しかし、土日祝日や年末年始などの閉庁日は、連絡忘れなどで依頼されてい施・入院患者の歯科治療・周術期等口腔機能管理(がん・開心術)・脳卒中患者の早期介入(入院直後~2日以内)・嚥下内視鏡(VE)、嚥下造影検査(VF)・がん化学療法/放射線療法患者に対する口腔回診・多職種カンファレンスの参加・口腔ケア困難者に対する歯科衛生士と看護師の協働実・チーム医療への参加:栄養サポートチーム(NST)、呼吸器サポートチーム(RST)、摂食嚥下支援チーム(SST)・他施設(大学病院)との共同研究・地域連携(かかりつけ歯科医、歯科医師会との連携)図2 当科の活動内容。Case1 看護師と歯科衛生士の協働63口腔衛生管理に関する取り組み
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