1889年Millerの化学細菌説う蝕原因菌は乳酸桿菌1898年う蝕の原因はプラーク1924年S. mutans の発見1970年以降う蝕原因菌はミュータンス連鎖球菌1990年以降社会経済・文化・環境状態もう蝕発症に大きな影響を与える 「むし歯はミュータンス菌と砂糖のせいで起こるんですよ」と患者さんに説明しているあなた、残念ながらそれは昭和の常識。令和のう蝕病因論(カリオロジー)は変わっています。 上の写真はStreptococcus mutans(S. mutans)です。その周りを囲むのは、カリオロジーのこれまでの変遷です。 1889年、Millerが化学細菌説を提唱しました。口腔細菌学の父と呼ばれる彼は「乳酸桿菌をはじめとする細菌が糖を発酵し排泄した酸が歯を脱灰させる」「炭水化物なくして酸はなく、酸なくしてう蝕なし」、そして「でんぷんは生では発酵せず、う蝕と関係があるのは煮焼きしたでんぷんだけ」と現代のカリオロジーの基礎を明らかにしました。 1898年に口腔内の細菌塊がプラークと名付けられ、う蝕の原因はプラークとなりました。1924年にS. mutansが発見され、1960年代にS. mutansに砂糖(ショ糖)を与えるとう蝕を起こすことが実験的に明らかにされました。1970年以降には、砂糖の摂取により不溶性グルカンを歯面に形成するS. mutansとS. sobrinusがミュータンス連鎖球菌と一括して呼ばれるとともに、ミュータンス連鎖球菌こそがう蝕原因菌と考えられるようになりました。う蝕は「ミュータンス連鎖球菌」と「砂糖」で起こる病気となったのです。Introduction Q&Aでチェック! あなたのカリオロジーは最新ですか?10
元のページ ../index.html#1