「圧下」のための歯科矯正用アンカースクリューテクニック
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図1-39 セルフドリリングタイプ。穿孔能力が高い分、操作性は良いが、歯根を損傷させるリスクは幾分高い。しかし、そのような先端を持ったドリルでも、そう簡単には歯根を貫通はしないことを図1-41~43の簡単なシミュレーションモデルで表す。再植8週間後再植2週間後再植前吸収部は治癒せず吸収部は治癒除去面積が9㎡以上の場合除去面積が4㎡以下の場合いったん置換性吸収が起きるメスで歯根膜(セメント芽細胞層含む)を除去図1-40再植実験では、2mm×2mmの小さな面積の歯根膜の損傷は治癒すると言われている。歯根膜のアンカースクリューによる損傷もこれと同様に考えれば治癒する可能性は高い(Andreasen JOの実験より要約)9。 偶発的な歯根接触が疑われた場合には再埋入を 埋入時の偶発的な歯根接触が疑われる場合には、少し回転を戻し、起始点の皮質骨の同じ部位を利用し、挿入の角度のみを変え再埋入を行う。その時に初期固定を得られない時には、一度撤去し、最初の起始点の埋入窩から2mm以上離した部位に埋入場所があれば再埋入する。 しかしながら、この際、歯根の損傷により、アンカースクリュー脱落の可能性が高まるため、予備としてまったく違う部位にもアンカースクリューを追加埋入しておき、万一の脱落への対応に備えておくとよい。 歯根膜をアンカースクリューがかすめることは、偶発症としてありうるが、その後、歯根膜は自然修復し、大きな問題を起こすことはない。しかし、歯根を直角に貫通する埋入を万が一行ってしまった場合は、抜歯につながる事故となりうる。セルフドリリングのスクリューの先端は非常に鋭く、穿孔能力がある(図1-39)が、手用ドライバーを用いれば根の貫通はない。経験を積めばそのような事故は埋入時の骨の硬さの触知からあり得ないが、十分に留意すべきである。万が一、損傷しても図1-40に示すようなメカニズムで治癒が起こると考えられる。42

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