医療安全 HAND BOOK
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10 リスクマネージメントの用語は、厚生労働省の平成14年医療安全対策検討会議の「医療安全推進総合対策」の報告書以降、“医療安全管理”と同義語として用いられている。 医療の質の向上と安全確保は、国民の願いであり、医療機関が取り組むべき優先の課題である。 医療は、患者と医療従事者との信頼関係のもとに行われるべきもので、国民の安全・安心が確保された医療サービスでなくてはならない。しかし、相次ぐ痛ましい事故が発生し、患者の医療への不信感が社会問題化し、さまざまなレベルで医療安全の確保に向けての取り組みが始まった。 近年の医療の高度化は、専門的医療が複雑化し、これまでのシステムでの医療安全の確保は難しく、体系的かつ広範な取り組みの推進、安全対策のあり方を見直すことが必要となっている。医療サービスは、医師や歯科医師からのみ提供されるのではなく、ほかの専門職や医療機器などを備えた医療機関という組織、システムによって提供されるもので、いずれが不足しても適切な医療サービスを提供することはできない。また、医療を取り巻く環境は、利用者である患者やその家族の権利意識が高くなり、医療本位の考え方から利用者が選択する医療へと変化してきている。利用者の視点での専門的な医療技術の充実と、利用者の安全・安心に応えられる医療システムへの改善が求められている。 リスクマネージメントの目的は、“医療事故防止の活動を通して、医療の質を保証する”ことにある。医療事故をなくすためには、医療機関のリスクに関する医療安全の確保を目的とした組織的管理が必要で、人為的ミスによる事故や偶発事故を発生させない予防対策、事故が発生した場合の再発防止対策が必要である。リスクマネージメントとは、このリスクに対する組織的管理、医療事故防止の活動をいう。すなわち、リスクマネージメントは、医療機関に内在するリスクを管理し、患者の安全を確保するという意味を含んで用いられる1が、医療機関の損失を最小化する対策(組織防衛)の目的にも用いられる場合がある。 医療機関においては、医療事故対策、再発予防体制が図られるようになり、事故予防対策を重点においた活動が講じられてきている。事故を未然に防ぐには、潜在的なハザート(危害の発生源)を特定化し、ハザートに対するリスクを予測する危険予知能力、体系的な安全確保が必要である。それには、事故が発生した場合に、当事者である個人を責めるの CHAPTERⅠリスクマネージメントの概要1.リスクマネージメントとは

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