ホームドクターによる子どもたちを健全歯列に導くためのコツ
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191Part ■1 初期う蝕の診断智歯萌出時に智歯周囲炎になり疼痛を訴えたり,対合歯欠損のために咬合面にプラークが付着して裂溝う蝕になってしまうことがある.小児の下顎6歳臼歯も同様であり,萌出時には炎症が起こり噛みにくく,対向する上顎の6歳臼歯が萌出して咬合するまではプラークの付着が起こりやすく,う蝕になるリスクが高い.また,子どもたちのう蝕に対する予防意識が成熟していないことも,この時期のリスクの高い原因である.シーラント 乳歯列の時点から管理できている小児であれば,6歳臼歯をう蝕にしない予防が可能ではないかと考えている.まず,萌出時に簡易防湿下でフッ素徐放性光硬化型アイオノマーセメントを用いてシーラントを行う(図2,3).上下の6歳臼歯が咬合するようになるとリスクは低くなり,アイオノマーシーラントは脱落してしまうが,その時点で視診とDファインダーによる触診で裂溝形態のリスクを診断する. ゾーンBの状態を把握することがもっとも重要であるが,現状ですべてを確実に把握することはできない.しかし,リスクが高いと判定できたのであれば,シーラントとしてエッチングを行ったのちスーパーボンドを流し込むのがもっとも浸透性がいいように感じている(図4). ゾーンAの部分が深く太い場合には,接着処理を行った後,フロアブルレジンを使用してシーラントを行っている(図5).リスクが低ければ通常のケアを行う.また,下顎6歳臼歯萌出時にもっとも注意しなければならないのは頬面溝の先天的なエナメル質の欠損である(図6).このエナメル質の欠損をみつけたときには,再石灰化促進療法はとらずに早期に充填をしておくべきである. 定期健診は通常4か月に1回行い,PMTCの後,高濃度のフッ化物塗布を行う.ホームケアではシュガーコントロールとフッ化物配合の歯磨剤使用を徹底してもらう. このように,6歳臼歯萌出前から管理できている小児で,裂溝形態のリスクを見誤らなければ,裂溝う蝕の予防は十分可能である.図4a ゾーンBの部分は浸透するには流動性がよく,接着力の強い材料がよい.スーパーボンドを使用している.図4b 抜去歯での実験では浸透性が高い結果がでている.スーパーボンド

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