パーシャルデンチャ―成功のための設計3原則
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40 付属ディスク収載の「Prof.五十嵐の欠損補綴症例106選」電子症例集は、以下の統一された書式にて掲載されている。各症例は、患者来院の経緯から、検査、診断、治療計画、実際の治療、治療後の経過まで、その概要と写真がコンパクトにまとめられており、端的に全容を把握することができる。56概 要 6年前に当院で上・下顎パーシャルデンチャーによる治療を受けた。最近、とくに上顎義歯がゆるくなり不安なため、定年を控え徹底的に治療したいとのことで、通常のパーシャルデンチャーに回転装着法を適用した。1. 主訴 上下の義歯について、治療してから長く経過しているため不安である。2. 既往歴 �歳代の半ばから、それまで治療されていた固定性ブリッジが動揺・弛緩し、除去しなければならず、初めてパーシャルデンチャーによる治療を受けた。はじめの義歯は抜歯後即時に装着されたといい、3年後に改めて義歯治療を受け、現在の義歯で都合4回目であるという。3. 現症 現義歯はレジン床義歯であるが、平均的にほぼ妥当な設計のものである。ただ、上顎前歯部の口蓋側は連続辺縁接触となっており、前歯部のプラークコントロールが問題と思われる。義歯の支台装置鉤腕が前歯部に環状鉤として設定され、大きく審美性を損なっている。2112および7の残存歯は適切に歯冠修復・補綴されている。各残存歯の歯周組織はほぼ正常であるが、前歯部口蓋側のポケットは3mm程度とほかよりは深い。各残存歯の動揺度はほぼ正常で、m0~m1程度である。歯冠修復の行われている7は根管処置歯、ほかは有髄歯である。歯冠-歯根比に問題はない。治 療 計 画 残存歯のプラークコントロールに配慮すること、義歯の動揺を生じさせないよう、義歯構造に剛性をもたせ、しかも構造強さを保ち、破折しないように計らうこと、さらに2112にあからさまな鉤腕を設定しないこと、などを考慮し、①金属床構造で②前歯部の鉤腕を可及的に割愛できるかどうか、回転装着法を含めて設計を検討することとした。1. 前処置 残存歯、およびその歯周組織にほとんど問題はなく、口腔清掃指導のみ行った。回転装着に必要な22の頬側遠心部、さらに7のサベーラインを検討した結果、現状のまま義歯メタルフレームを設定しても義歯の維持には問題ないことを確認した。2. 義歯設計の要点 22に舌面レストを形成した。7は既存のレストを流用できた。義歯の支持は各残存歯のレスト、維持は22の唇側に遠心から歯科矯正用のボールクラスプを応用したⅠバーとした。回転装着は最終的にはアンダーカット部となる22の遠心歯頸部へ義歯構造を接触させ、次いで7のクラスプを装着させることで成立するように設計した。義歯構造は前歯部歯頸部を大きく開放できる後パラタルストラップとし、清掃性と義歯の剛性に留意した。 装着時の審美性は歯頸部にやや金属部が見られるが、通常の会話程度では外見に露出しない。経 過 審美性の回復についての患者の評価は大きく、喜ばれた。義歯の安定は当初やや不安と想定されたが、実際にはまったく問題なく、回転装着の有効性をあらためて認識させられた。Kennedy分類:上顎 Ⅱ級1類 下顎 ̶Eichner 分類 :B4症 例27上顎金属床による回転装着義歯症例(��歳・男性)本症例がKennedy分類およびEichner分類において、いずれに分類されるか、冒頭で提示「概要」欄では、患者の「主訴」「既往歴」「現症」を解説「治療計画」欄では、検査・診断をもとに得られた治療方針を提示するとともに、実際の「前処置」および「義歯設計の要点」を詳述「経過」欄では、治療後の調整や患者の感想、メインテナンスの内容などを具体的に紹介電子症例集の掲載内容と特長1
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