ジャパニーズ エステティック デンティストリー 2014
4/8

OKAWA25THE JAPANESE JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYISSUE 2014 現在、とくに欧米において酸蝕症(Erosion)は歯列および咬合を不可逆性の重度崩壊へと導く危機的な疾患として深刻な問題となっている1-3。とくに、若年者の有病率が高く、また増加傾向にあることを示す調査報告もある4,5。酸蝕症の原因は神経性過食症、胃酸逆流、裂孔ヘルニアのような内因的な酸産生疾患と同時に、酸性飲料(炭酸飲料、フルーツジュース、酢など)、酸性食品の高消費による外因性異常とバランスの悪いダイエット習慣である。さらに、さまざまな疾患や薬物によって誘発された唾液の流動および緩衝能の低下などが挙げられる6-8。また、起床時および睡眠時のブラキシズムなどの機能異常は近年増加傾向にあり、酸蝕症患者においては象牙質の露出やDeep-over-biteによる咬合圧の増加などが引き金となり歯を著しく咬耗(Attrition)させる9,10。 しかしわが国では、初期酸蝕症患者の歯科医院への受診機会が少ないことや修復治療におけるMIの概念、および初期の段階で治療介入することの利点がまだまだ歯科医師側に浸透していないこと、そして治療費用の問題などから、重度の歯質欠損に至るケースが少なくない。この危機的な疾患を初期段階で発見し、病因を特定し、予防・治療・メインテナンスすることは、修復処置の臨床成績の点でも優位となる11。酸蝕症における修復治療においては多くの場合、咬合高径(Vertical Dimension of Occlusion、以下VDO)の挙上を必要とする。つまり、上顎前歯の切縁の延長からはじまり、臼歯を含む歯の解剖学的形態の回復による審美的および機能的再建が必要であり、そのためには包括的治療計画立案と、それに従った治療のシークエンスが不可欠である。また、今回提示するような酸蝕症の修復治療において、MIの概念に則った、接着技術を用いた間接法のセラミックスとコンポジットレジン(Composite Resin、以下CR)による修復は有効である。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です