ジャパニーズ エステティック デンティストリー 2014
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9THE JAPANESE JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYISSUE 2014YAMAZAKI 審美修復治療を成功に導くための要素とは何であろうか。患者に応じた診査・診断か。患者の要望を包み隠さず引き出すことのできるコミュニケーションスキルか。歯科医師・歯科技工士の手技や経験か。それとも、飽くなき最新マテリアルの追求か。おそらく、それらすべてが成功へのキーとなる。 しかしながら、日常臨床においてこれらすべての条件を満たすことは容易ではなく、それぞれの術者・患者が限られた条件の中で最善を尽くすことを求められている。生体的なコスト、時間的なコスト、そして経済的なコストなどさまざまな条件が複雑に絡み合い、さらにこの原稿を執筆している最中にも、世界のどこかで新たなマテリアルや術式が開発されているかもしれない。昨今のDigital Dentistryの進化、そしてそれがもたらすマテリアルセレクションの広がりはめざましく、また、矯正治療もますます積極的に取り入れられるようになってきた。インプラント埋入のための外科術式・再生療法も、最新のテクニックを知ると知らないとでは結果が大きく異なってくる。30余年にわたって審美修復治療の最前線に携わってきた筆者からしても、どの時点で「最善の審美修復治療」と呼ぶことができるものか明言できないもどかしさを感じるとともに、今後の展開にまだまだ期待している最中である。 今回供覧する症例は、上顎の6歯に先天性欠損がみられ、26年前に全顎的な修復治療を受けた患者がその後再治療を経て、そして最後に筆者のもとに来院したものである。口腔内の状況は非常にシビアな症例であったが、幸いなことに筆者が提供する術式やマテリアルに関してはすべて受け入れていただくことができ、まさに現代の審美修復治療の、現時点での集大成として供覧させていただけるケースとなっている。また、筆者のもとに来院する以前の治療も各時代ごとに最善のものが提供されていたと思われ、その点においても貴重な症例といえる。本稿が、現代の審美修復治療についてのディスカッションの端緒となれば幸いである。

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