Digital Dentistry YEAR BOOK 2014
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10TECHNICAL REVIEWはじめに 2014年4月の歯科診療報酬改定において、CAD/CAM冠が新設された。はじめてこの情報を聞いた時、「CAD/CAM冠って何?」とほとんどの人が思われたことだろう。CAD/CAM冠はあくまで保険用語であり、正確に説明するならば「歯科用CAD/CAMシステムを用いて製作したハイブリッドレジンクラウン」ということになる。そして、今回のCAD/CAM冠は先進医療からの保険導入であり、歯科ではなじみが薄いプロセスであることも唐突に思った一因であろう。先進医療は、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養であり、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養として、未だ保険診療の対象に至らない先進的な医療技術等と保険診療との併用を認めたものである。2014年6月1日現在において、先進医療は「先進医療A」として56種類、「先進医療B」として39種類承認されているが、そのうち歯科に係わる技術は先進医療Aの「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」「有床義歯補綴治療における総合的咬合・咀嚼機能検査」「金属代替材料としてグラスファイバーで補強された高強度のコンポジットレジンを用いた3ユニットブリッジ治療」の3種類である。実際に先進医療から保険診療へ収載された最近の例としては、2012年度の診療報酬改定で適応範囲が臼歯部に拡大された接着ブリッジがあり、今回の改定では「歯科用CAD・CAMシステムを用いたハイブリッドレジンによる歯冠補綴(全部被覆冠による歯冠補綴が必要な重度齲蝕小臼歯に係るものに限る。)」と「X線CT画像診断に基づく手術用顕微鏡を用いた歯根端切除手術」の2つの技術が先進医療から保険診療へ収載された。 CAD/CAM技術の歯科への応用を研究し、その技術の普及を願ってきた関係者にとっては、これまで培ってきた長年の研究開発の大きな成果であり、ついにCAD/CAMが保険収載されたことに感慨を覚えずにはいられない。 そこで、この局面にあたり、これまでに筆者が関与してきたCAD/CAM冠に至るまでの技術開発を振り返り、将来展望を考察したいと思う。歯科におけるCAD/CAMの歩み 歯科分野におけるCAD/CAM技術応用の発想は、1970年代にさかのぼる。内山1は、現代社会では手作業をほとんど経験しないで成長してしまう子供たちが増加し、将来さまざまな分野で高度な手技を必要とされる技術者の養成が困難になりつつあると指摘し、一般工業界の技術を取り入れより単純で確実に行える歯科治療の方法を積極的に検討していくことを提唱した。1980年代になると海外では、Duret F2、Rekow D3、Mörmann WH4らが歯科用CAD/CAMシステムの研究を発表し、とくにMörmannらが開発したCEREC Systemは、現在まで改良がCAD/CAMハイブリッドレジンクラウンの臨床―保険導入によせて―疋田一洋(北海道医療大学歯学部口腔機能修復・再建学系高度先進補綴学分野)

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