パーシャルデンチャーのつくり方
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54Episode12 下顎両側性遊離端欠損選択に大きな影響をもたらしているのは否めない. 言い換えれば,術者のほうが良いと判断しても,必ずしもそれを推奨できないのが事実で,義歯を含めた修復に対する選択権はあくまでも患者側にあることを忘れてはならない. 幸い本症例においてはすべて術者に選択を依頼されたので,レジン床義歯にすると設計の自由度が損なわれることからCo-Cr合金のワンピースキャストの金属床義歯とした. 図6,7に完成義歯を示す.図6の咬合面観から一見してわかるのは骨隆起を大きく避けた舌側の床形態である.骨隆起は削除することも考えられるが患者の年齢,時間的要素も考慮して今回はそのままで義歯製作を行った. そのため,本来は最後方歯の後方部に金属とレジンのフィニッシュラインを設けるのが普通だが,骨隆起を避けるためにフィニッシュラインを1歯分前方に設定した.これは,仮にを失った際に人工歯追加修理が容易になるようにも意図されている.図8は装着時の咬合面観,図9は咬合時の右側側方面観である. 患者は義歯の使用が初めてで装着には多大な憂慮をもっており,最初の装着時には「こんな大きな義歯は入らない」と言い,実際に試適時も自分では絶対できないと術者を悩ませていたが,何度か練習したのちに自分で装着することができるようになった. 装着1週間後,第1回目のチェックを行ったが,咀嚼時に粘膜面下に疼痛を生じるとのことであった.咬合調整を行い床粘膜面も適合試験材にて疼痛部を特定したのち調整を行った.その後,2回の調整を行ったが,すべてに快調だとのことで定期的管理に入った.4. Postoperative Condition義歯の回転,浮き上がりを防ぐために反対側にレスト,クラスプを設置フィニッシュラインは骨隆起を避け,かつが欠損した場合にも対応できるように1歯分前方に設けた弾力性と審美性に優れた白金加金のワイヤークラスプ※欠損形態はケネディー分類Ⅰ級であるが,7は対合歯の動揺が大きいため補綴修復を行っていない
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