必ず習得しておきたい歯科医院のための救命救急処置
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12イザというとき慌てない!必ず習得しておきたい歯科医院のための救命救急処置 歯科治療中に患者が心肺停止に陥った場合,速やかに適切な処置を行わなければ,患者の尊い命が失われることになる.緊急時の処置は,世界的な基準に基づいたガイドラインに則って行われなければならない.本章では,まず,患者の命にかかわるような事態に際しての基本的知識として,世界基準の対応法と日本におけるガイドラインを紹介する.そして,蘇生のためのポイントとなる質の高い心肺蘇生法と迅速かつ安全な除細動について,歯科医院特有の環境も交えて解説する.また,救急車の出場要請が必要なケースを改めて確認し,救急搬送時の要点について検討する.はじめに世界基準の蘇生法ガイドラインはいつできたのか? 心肺停止のような緊急事態では,そこに居合わせた歯科医療従事者が,直ちに救命救急処置を行わなければならない.近年,歯科医療従事者の間でも,蘇生法ガイドラインの存在が当たり前のように認識されている.しかし,世界規模の蘇生法ガイドラインの歴史は,あまり古いものではない. 1992年,世界各地域の蘇生協議会の活動を統合するために,国際蘇生連絡協議会(International Liaison Committee on Resuscitation:ILCOR)が設立された.それまで,アメリカ心臓協会(American Heart Association:AHA)が膨大なデータに基づく蘇生法の基準を発信してはいたが,世界共通のガイドラインは存在していなかった.ILCORの設立から8年経った2000年に,ようやくAHAとの共同作業によって世界基準のガイドライン2000が発表された.国際合意に基づく心停止アルゴリズム 2000年以降も,蘇生に関するエビデンス評価はつねに続けられており,改訂された国際コンセンサスが5年毎にILCORから発表されている.2010年10月18日に発表された「心肺蘇生と救急心血管治療における科学と治療勧告についての国際コンセンサス(Consensus on Science and Treatment Recommendations:CoSTR)2010」は,何万もの査読論文を解釈してまとめられたものである.CoSTR 2010に基づく心停止アルゴリズムを図1に示す1,2.救命救急処置ガイドライン

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