TMD YEARBOOK 2013 顎の痛みに対処する
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13総論 AAOPの提案する新しいガイドラインと世界の動き別冊the Quintessence 「TMD YEAR BOOK 2013」Special Interest Group)が中心となり,厳密な文献レビューおよび多施設臨床試験による信頼性と妥当性の検証を経て,ようやく,DC/TMDが公表される運びとなった2. DC/TMDもRDC/TMDと同様に構造化された問診票,診察,検査,各病態の診断基準が準備され,2軸診断システムを有する.ただし,本稿の執筆時点でDC/TMDは正式には公表されていないため,その詳細については別の機会に譲りたい.なお,DC/TMD英語版(オリジナル)はInternational RDC-TMD Consortium Networkのウェブサイトでまもなく公開予定である.また,日本語を含む各言語への翻訳作業も進められており,各翻訳版も正式な手続きを経た上で随時公開される予定である.2.AAOPのガイドラインの改訂 いわゆる「AAOPのガイドライン」の最新版である「米国口腔顔面痛学会による口腔顔面痛の評価,診断,管理の指針 第5版」5が,2013年4月にオーランド(フロリダ)で開催されたAAOP年次学術大会に合わせて発刊された.2008年発行の第4版から5年が経過し,随所に新たな知見に基づく改訂がなされているが,今回の改訂の大きな目玉は2つある. 1つ目は,欧米におけるTMD分類の統一である.これまでは,AAOPのTMD分類とInterna-tional RDC-TMD Consortium NetworkおよびIASPのOrofacial Pain Special Interest GroupのTMD分類は同一ではなかった.しかし,今回の改訂の際に,後者による国際コンセンサスワークショップにおいて作成されたTMD分類(10ページ表1「拡大TMD分類」を参照)がAAOPに採用され,少なくとも欧米においては,統一されたTMD分類が用いられることになった. 2つ目は,TMD診断基準の改良版であるDC/TMDが,AAOPのガイドラインにそのまま採用されたことである.AAOPは元来,口腔顔面痛およびTMDに関する高度な専門性を有する臨床医の集まりである.DC/TMDの採用によって真の意味で「共通の道具」が用いられることになり,今後この診断基準で行われる症例報告を含むあらゆる臨床報告において患者集団の比較が直接可能となる. また,前述のように,DC/TMDは各言語に翻訳されるため,今後世界レベルでも患者集団の比較が精度高く可能となる.したがって,研究間でのデータの統合やメタ分析などのデータの二次分析も容易になることが予想され,質の高いエビデンスの創出に絶大な威力を発揮することが期待される.3.日本顎関節学会による顎関節症の症型分類の改訂 日本顎関節学会による顎関節症の症型分類は,1986年に症型分類案として学会誌(当時は顎関節研究会)に掲載され,1996年の改訂で症型分類として完成した.その後,今日まで2001年に表記方法が改訂6されたものの,17年間に渡って顎関節症の専門医のみならず一般臨床医においても,さらには歯科大学・歯学部学生の教育現場においても広く利用されてきた. しかし,RDC/TMDやDC/TMDのように信頼性および妥当性の検討がなされていないこと,系統診断の適用により重複診断が制限されること,得られた診断と実際に症例が抱える問題や治療法との乖離がみられることなどの問題も指摘されていた.また2011年当時,DC/TMDが今にも公表されるという状況であった(実際には,その後約2年も要することとなった)7.そのため,約1年をかけて改訂作業が行われ,「顎関節症の概念(2013年)」ほかとともに「顎関節症の病態分類(2013年)」として公表されることとなった8.4.国際頭痛分類第3版の公表 国際頭痛学会から国際頭痛分類第3版(ICHD-Ⅲ,International Classification of Headache Disorders 3rd edition)が公表された9.国際頭痛分類第3版は,1988年の第1版,2004年の第2版に続く最新の改訂版である.なお,現在は原文(英語)のICHD-Ⅲの

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