TMD YEARBOOK 2013 顎の痛みに対処する
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121章 TMDの分類と診断基準別冊the Quintessence 「TMD YEAR BOOK 2013」総論はじめに 2013年は,このところ大きな変化のなかったTMDの領域に,世界的にも,また国内においても大きな変化が起きている. 海外においては,Diagnostic Criteria for Tem-poromandibular Disorders(DC/TMD)の公表,米国口腔顔面痛学会によるいわゆるAAOPのガイドライン第5版の公表,関連領域では,国際頭痛学会の国際頭痛分類第3版(ICHD-Ⅲ,International Classifica-tion of Headache Disorders 3rd edition)の公表が挙げられる.一方,国内においては日本顎関節学会による顎関節症の症型分類の改訂が挙げられる. これらの変化は,今後のTMD臨床,研究,および教育に大いに影響するものであり,当該領域を専門としている者のみならず,一般臨床医の診療にも大きなインパクトを与えるものであろう.そこで,まずこれらの変化の概要について紹介する.TMDおよび関連領域における潮流1.DC/TMDの公表 研究用のTMD診断基準であるResearch Diagnos-tic Criteria for Temporomandibular Disorders(RDC/TMD)1の改良版のDiagnostic Criteria for Temporo-mandibular Disorders(DC/TMD)2が,いよいよ公表されることとなった. RDC/TMDは,1992年にワシントン大学のDwor-kinらが中心となって作成され,生物・心理社会学的モデル(bio-psychosocial model)に基づく2軸診断システムを特徴としている.すなわち,第1軸(AxisⅠ)で身体的な評価,第2軸(AxisⅡ)で心理社会学的な評価を行う.用意されている詳細なプロトコールにしたがって問診,診察を進めることで共通の診断基準に基づく被験者集団が得られ,これによって,研究者間で研究データの比較が可能となる.このようなことから,RDC/TMDは医学生物学領域で最も頻繁に引用されているいわゆる世界標準のTMDの診断基準とされ,近年のTMD研究の発展に大いに貢献してきた. 一方で,RDC/TMDは「複雑すぎて臨床の場では使いづらい」という意見や,大規模な妥当性検討プロジェクトの結果3,4から,その改訂の必要性に迫られてきた.そこで,国際歯科研究学会(IADR,International Association for Dental Research)のInter-national RDC/TMD Consortium Networkおよび国際疼痛学会(IASP,International Association for the Study of Pain)の口腔顔面痛グループ(Orofacial Pain AAOPの提案する新しいガイドラインと世界の動きキーワード:TMD,AAOP,DC/TMD,ガイドライン古谷野 潔/築山能大/桑鶴利香/大穂耕平九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座インプラント・義歯補綴学分野連絡先:〒812‐8582 福岡県福岡市東区馬出3‐1‐1
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