有病高齢者歯科治療のガイドライン 上
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第3章狭心症患者の歯科治療 CS5やCM5は第Ⅱ誘導に比べて側壁の心筋虚血がわかりやすいという利点はあるが,電極を胸部に付けなければならないので,歯科治療中のルーティンのモニタリングとしては制約がある.その点,第Ⅱ誘導は胸を開はだける必要がない.狭心症の重症度を考慮に入れて,胸痛発作の頻度が少なければ第Ⅱ誘導でも構わないが,胸痛発作の起こりやすい患者ではCS5あるいはCM5をモニタしたほうがよいだろう(第6章,P.129参照).5)胸痛発作時の救急処置 もしも歯科治療中に胸痛発作が起こったら,ただちに歯科治療を中断して救急処置を行う.①デンタルチェアの背板を挙上して,座位ないしは半座位にして,安静を保つ.②酸素吸入(約5L/分)を行い,心筋酸素供給量を増加させる.③内科主治医から処方されている発作止めの硝酸薬を服用させる.最近は舌下錠よりもスプレーを処方されていることが多い.④ニトログリセリンスプレーは噴霧後1~2分すれば発作が治まる.3分経っても軽快しなければ追加噴霧する.⑤いつもの量を投与して,いつものように治らなければ,いつもより重篤な狭心症発作が起こったか,あるいは急性冠症候群かもしれない.いずれにしても内科主治医に連絡して病院へ搬送する.6)実際の歯科治療方法 狭心症患者に歯科治療を行う際には,下記のような注意が必要である.①当日は,いつもの抗狭心症薬をいつもどおり服用したことを確認する.②緊急薬のニトログリセリンスプレーを持参していることを確認する.③自動血圧計を使用して血圧,脈拍数,SpO2,できれば心電図をモニタする.④精神鎮静法やリラックス歯科を利用して,精神的ストレスを軽減する.図3-20モニタ誘導CM5(胸骨柄-心尖部)CS5(右鎖骨下-心尖部)V1V2V3V4V5V6V1V2V3V4V5V664

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