有病高齢者歯科治療のガイドライン 上
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第4章心筋梗塞患者の歯科治療3)歯科治療中のストレス軽減(1)精神的ストレスの軽減 歯科治療にともなう不安感や恐怖心などの精神的ストレス,注射刺入時や治療中の痛み,外科的侵襲といった身体的ストレスにより血圧が上昇して心拍数が増加すると,心筋酸素消費量が増加して心筋虚血発作が起こりやすくなる.狭心症患者と同様,心理的アプローチや精神鎮静法により患者の不安や恐怖を緩和することが大切である(第3章,P.61参照). 著者らは,患者に「お気に入りのCD」を持参してもらいヘッドフォンで楽しんでもらいながら精神鎮静法を行って,歯科治療に対する不安感や恐怖心を取り除く精神鎮静法「リラックス歯科」を実践している.とくに笑気吸入鎮静法は笑気ガスとともに高濃度の酸素を投与できるので,心筋酸素供給量を増加させることができる.狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患患者には,歯科治療中の胸痛発作の予防に有効であろう(P.61,表3-6参照).抗血栓療法患者における口腔外科処置時の注意点表4-5抜歯基準・PT-INR値が3.0以下なら抜歯可能局所炎症・抜歯前にスケーリング,ブラッシング指導,抗菌薬投与局所麻酔・下顎孔伝達麻酔は原則的には行わない・十分量の局所麻酔薬を投与する抜歯本数・初めは1~2本から開始する・1回3本以内の普通抜歯にとどめる抜歯操作・周囲組織の挫滅をさける・抜歯窩の炎症性肉芽を残さない止血処理・吸収性止血材(スポンゼル®,オキシセル®),縫合処置・止血シーネ,パック(サージカルパック®,コーパック®)精神鎮静・精神鎮静法により血圧を安定させる術後処方・抗菌薬,鎮痛薬の投与に注意する抗血栓療法患者における歯周・保存・補綴処置時の注意点表4-6歯石除去・歯肉の炎症が強ければ消炎を図った後に除石する・歯肉縁下歯石の除去は超音波スケーラーを使用する・広範囲をさけ,1回に1/4~1/6顎にとどめる・除石後は歯周パックで炎症抑制,止血処置を行う歯肉切除・歯肉切除術よりも歯肉剥離掻爬術のほうが望ましい歯内療法・根尖を越えてのリーマー操作,過剰根管充填をさけるバキューム操作・バキュームの先で長時間軟組織を吸引しない可撤式義歯・新製義歯の辺縁部による潰瘍形成を少なくする・頻回に患者を来院させて義歯床縁の調整を図る・就寝時は必ず義歯をはずさせる電気メス・腐食薬・電気メスや腐食薬の使用による二次出血に注意する81

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