有病高齢者歯科治療のガイドライン 上
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第9章糖尿病患者の歯科治療(2)低血糖①低血糖の定義 血糖値50mg/dL以下を低血糖と定義する.低血糖により交感神経症状と中枢神経系症状が認められる.一般に中枢神経症状よりも交感神経症状が先行して出現するので,交感神経症状は中枢神経症状出現前の警告症状とされている(表9-3).②低血糖の症状 血糖値が55mg/dL以下に低下すると,交感神経症状として発汗,振戦,動悸,悪心,不安感,熱感,空腹感,頭痛などの症状が出現する.ただ,高齢者では交感神経症状が現れにくいことがあるので,高齢者の歯科治療時には注意が必要である. 血糖値が50mg/dL未満に低下すると,中枢神経症状として眠気,脱力,めまい,疲労感,集中力低下,霧視,見当識障害などのブドウ糖欠乏症状,不安感,抑うつ,攻撃的変化,不機嫌,周囲との不調和といった精神症状がみられる. 血糖値が30mg/dL未満に低下すると,大脳皮質低下が進行して痙攣,意識消失,一過性片麻痺が現れ,昏睡に至り,さらには死に至る.血糖値低下時の生体反応表9-3血糖値(mg/dL)生体反応80~85インスリン分泌抑制65~70グルカゴン分泌促進:肝グリコーゲン分解,糖新生促進アドレナリン分泌促進:肝グリコーゲン分解糖質コルチコイド分泌促進:糖新生促進55以下交感神経症状:発汗,振戦,動悸,悪心,不安感,熱感,空腹感,頭痛 など50未満中枢神経症状:眠気,脱力,めまい,疲労感,集中力低下,見当識障害,不安感,抑うつ,不機嫌 など30未満大脳皮質低下:痙攣,意識消失,一過性片麻痺,昏睡 など発汗眠気痙攣空腹感集中力低下意識消失185
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