有病高齢者歯科治療のガイドライン 上
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第2章高血圧患者の歯科治療(4)最近の血圧変動 最近の血圧の値とその変動幅を知ることは大切である.血圧手帳に記録している患者もいる.日頃の血圧の変動幅が大きい患者やときどき160mmHg以上を示す患者は,歯科初診時の血圧が比較的低い値を示しても,歯科治療中に血圧が急上昇することがある.3)主治医から情報を得る 高血圧のために内科治療を受けているのに初診時の収縮期血圧が160mmHg以上を示すような患者については,内科主治医とコンタクトをとり,血圧のコントロール状態に関する情報を得る. また合併症のある場合には,基礎疾患の発症時期,症状の経過,最近の症状および重症度について情報を得る.4)どのような薬を服用しているか 高血圧患者はCa拮抗薬,ARB,ACE阻害薬などを服用していることが多いが,高血圧が重症になるほど,作用の異なる降圧薬を2種,あるいはそれ以上組み合わせて処方されるので,処方されている降圧薬によって重症度をある程度推測することができる. たとえば初診時150/90mmHgという血圧を示す患者でも,Ca拮抗薬のみを服用している場合は比較的リスクが低いが,複数の降圧薬をあわせて服用している場合は,より重症な高血圧患者といえる. ただ降圧薬は高血圧以外の疾患においても処方されるので,降圧薬を服用しているからといって必ずしも高血圧があるとは限らない(表2-8).主要降圧薬の積極的適応表2-8Ca拮抗薬ARB/ACE阻害薬利尿薬β遮断薬左室肥大●●心不全●*1●●*1心房細動(予防)●頻 脈●*2●狭心症●●*3心筋梗塞後●●タンパク尿●腎不全●●*4脳血管障害慢性期●●●糖尿病/MetS*5●高齢者●*6●●*1少量から開始し,注意深く澵増する *2非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬 *3冠攣縮性狭心症には注意*4ループ利尿薬 *5メタボリックシンドローム *6ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2009.東京:ライフサイエンス出版.より)35
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