有病高齢者歯科治療のガイドライン 上
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第2章高血圧患者の歯科治療2)高血圧の重症度を評価する(1)リスク評価と対応方法(表2-7)①歯科で血圧が高いことを初めて知った患者,高血圧は知っていたが放置していた患者は,内科医による血圧のコントロールが行われていないので歯科治療は危険である.歯科治療の前に内科を受診させ,血圧がコントロールされてから歯科治療を行う.②頭痛,めまいなどの高血圧症状のあるときだけ内科で薬をもらって服用し,1~2週間で症状がおさまれば通院をやめてしまった患者も,歯科治療の前に内科を受診させる.③内科治療が行われている患者は比較的血圧がよくコントロールされている場合が多いが,歯科治療前に日頃の血圧値がどのくらいかを確認しておく.(2)高血圧症状の有無 日頃から血圧の高い患者の多くは頭痛,めまい,肩こり,耳鳴りなどの高血圧症状を自覚しているが,逆に血圧が相当高くても何ら症状もなく,普段と変わらない生活をしている患者もいる.自覚症状の有無と高血圧の重症度とは必ずしも一致しないので注意しなければならない.(3)合併症の有無 血圧の高い状態が長期間続いていれば,心血管系に二次的な障害を引き起こしている可能性がある.脳血管障害,狭心症,心筋梗塞,慢性腎臓病などの合併症を有する患者は,血圧だけが高くて臓器障害のない患者に比べてリスクが高く,歯科治療中に全身的偶発症が起こりやすい.高血圧患者のリスク評価と対応方法表2-7患者の分類高血圧の既往高血圧症状内科治療対応方法歯科で血圧が高いことを初めて知った(-)(-)(-)内科受診させて,血圧がコントロールされてから歯科治療を始める血圧が高いことは知っていたが,放置していた(+)(+ or -)(-)高血圧による症状のある時だけ内科治療を受け,症状がなくなると放置する(+)(+)(±)定期的に内科治療を受け,降圧薬をずっと服用している(+)(-)(+)日頃の血圧がコントロールされていることを確認してから歯科治療を始める図2-10高血圧の原因疾患,あるいは合併症心肥大心不全慢性腎臓病脳卒中狭心症心筋梗塞高アルドステロン症分泌促進副腎皮質アルドステロン(血圧上昇)甲状腺機能亢進症34
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