別冊 臨床家のための矯正YEAR BOOK2013
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098海外論文臨床家のための矯正YEAR BOOK 2013はじめに 未萌出犬歯が正中線を越える現象を遠隔転移(transmigration)という1.正中線を越える歯は下顎歯のみと考えられ,転移は下顎犬歯にもっともよく認められ,次いで下顎側切歯および小臼歯に多いとされた2.最近では,上顎犬歯の転移も報告されている3~5.Javidが実施したエックス線撮影による調査6では下顎犬歯の転移の発生率は0.1%と報告され,Büyükkurtら7は一般集団での発生率を0.33%と報告した.VuchkovaとFarah8は,オーストラリア人母集団から抽出した標本での発生率を0.006%と報告した.ギリシャ人母集団から抽出した標本の調査を実施したMazinisら9は発生率を0.17%とし,Aktanら10はトルコ人母集団から抽出した標本での発生率が0.14%であることを明らかにした.本症例報告のほとんどは,単一症例または複数症例だが,埋伏下顎犬歯の遠隔転移と不正咬合および形態学的特徴との関連性:7症例の分析Anup Holla/Mansoon Saify/Sandeep Parashar[Case Reports]翻訳・要旨:宮下邦彦東京都新宿区開業連絡先:〒160‐0016 東京都新宿区信濃町10‐13 宮下矯正歯科医院キーワード:異所性,埋伏,下顎犬歯,パノラマエックス線写真,遠隔転移目的:下顎犬歯遠隔転移の症例にともなう形態学的パラメータを調査する.方法:患者3,500例の歯科矯正記録を調査し,下顎犬歯転移の有無を確認した.側方頭部エックス線規格写真(以下,側方セファロ)と研究用模型を分析し,骨格性および歯性のパラメータを確認した.被験者の性別,年齢の観察を行い,パノラマエックス線写真から転移の左右の別,位置および種類を記録した.結果:7症例が下顎犬歯の遠隔転移として検出することができた.これらの7例は,女性4例,男性3例,年齢14~21歳であった.すべて片側性であり,type1が3例,type2が3例,type4が1例であった.4症例では残存乳犬歯および第二大臼歯が認められた.2症例には,部分性無歯症および上顎犬歯口蓋側転移を認めた.6症例にアングルII級不正咬合を認め,5症例では過蓋咬合(40%超)および過度なSpeeの湾曲を認めた.5症例では,過度な前下顔面高の増大および過剰な歯質(大きな歯)がみられた.結論:歯性II級不正咬合において,下顎前歯の根尖部にスペース増大(結果的に犬歯誘導の喪失)を示すような過蓋咬合,深いSpee湾曲,過剰な歯質および前下顔面高の増大は,犬歯遠隔転移の病因となりうる. (Orthodontics (Chic.) 2012;13:156‐165)Transmigration of Impacted Mandibular Canines and Its Association with Malocclusion and Morphology:An Analysis of Seven Cases Department of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics, KD Dental College and Hospital, Chatikara, Mathura, UP, India address:NH-2, Chatikara Mathura, UP 281006, India

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