乳歯列期における外傷歯の診断と治療
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052Ⅲ乳歯における震盪Ⅲ‐6震盪とは 震盪は脱臼性外傷の中ではもっとも軽度なものである.乳歯では打撲などの軽度な外傷因子による震盪は,幼児の日常生活で高頻度に生じていると考えられる.視診ではとくに異常な所見を認めず,エックス線検査においても,正常な歯根膜腔と歯槽硬線が観察される.患者は打診に対して,違和感や軽度の痛みを訴えるのみで,その他の臨床上の所見を認めない.歯根膜組織には,軽度の炎症がみられる状態であり,「亜脱臼」に認められるような歯肉溝からの出血や触診による動揺はない. 「震盪」と「亜脱臼」の違いを図①,②に示す.「震盪」では,歯根膜に軽度の炎症を認めるのみで,根尖部の歯髄への血液供給を司る脈管の断裂は生じていないことが多い.(2)経過観察の重要性 患者と保護者には,しばらく受傷部位を避けて食事をし,安静を保つよう指導する.通常1年程度の経過観察を行い異常がなければ終了となるが,後継永久歯との交換までは注意が必要である. 震盪と診断された外傷歯において,根尖部から歯髄への血流の供給が断裂し壊死に至ることはまれである.しかし,どんなに軽度の震盪であっても,歯髄壊死に至る可能性はあるため,経過観察は必ず行わなくてはならない.とくに根尖孔の狭い根完成歯では断裂しやすく修復されにくいため注意すべきである.経過観察中に,明らかな歯髄壊死と診断される場合や,歯根の内部・外部吸収が認められた場合は根管治療を行う.頻度は低いが,エックス線検査で歯髄腔の狭窄または閉塞を認めた場合は,臨床症状がなければ根管治療を行わず経過観察を行う.(1)震盪と亜脱臼の比較 歯が外傷を受けた場合,重症な歯のほうに目が行きがちであるが,隣在する歯も程度の差はあれ外傷を受けている可能性があるので十分に診査することが大事である.通常震盪の場合,何も処置をせずに経過をみるのが普通であるが,この症例(図③~⑩)では亜脱臼を起こしていたAの動揺と打診痛が強かったためツイストワイヤーとフロアブルレジンによる固定を行った.震盪を起こしていたAは動揺がなく打診痛も軽度であったため固定源とした.その後とくに臨床症状もなくAAの歯根は順調に吸収し後継永久歯と正常に交換した.根管治療を行わずに経過したことは幸いである.このようなケースでは,歯髄壊死が生じて歯冠が変色してくることも多いので,後継永久歯が萌出するまで継続的な診査が必要である.☆亜脱臼では歯根膜線維の断裂が起こり,歯に軽度な動揺を認め,歯肉溝からの出血を伴う.☆震盪は歯根膜組織に内出血を伴う.①②症例
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