55 歯周炎による喪失歯数は,ステージを決定する明確な指標の1つである.しかし,全体的に重度歯周炎に罹患しているが,1本も歯を喪失していない患者の場合はどのように診断したらいいのだろうか? 2020年に,Journal of PeriodontologyとJournal of Clinical Periodontologyの両誌に,歯周病学における世界的権威の先生方がguest editorialとして,「歯周炎の新分類の使用説明」という論文を報告している9.その論文のなかで,歯周炎による喪失歯数を計算する際は,抜歯適応の重度歯周炎に罹患している予後不良歯(hopeless teeth)を含めることを推奨している. AAPのホームページ内に「歯周病およびインプラント周囲組織の疾患と状態に関する新分類についてよくある質問Q&A」というコンテンツがあり,次の例が提示されている10. すでに歯周炎により2本の歯を失った歯周炎患者が,歯周組織の破壊のためさらに3本の歯を抜歯する必要がある場合,抜歯予定歯は歯周炎により喪失した歯数に含める必要がある.したがって,患者は歯周炎により5本の歯を喪失することになり,ステージⅣに分類される. 先述したように,ステージⅢとⅣの違いは“広範囲の補綴処置や矯正歯科治療など,専門医どうしの連携が必要となる症例”かどうかが本質である.アクティブな歯周治療計画を立案することで,結果的に歯周炎による喪失歯が増えてしまうようならば,治療内容はより専門的な領域にシフトする.そのため,“歯周炎によってすでに喪失している歯”と“歯周炎によって抜歯予定の歯”の合計でステージを診断したほうが,適応される治療内容との整合性が得られるように思われる(図3-1-6,7). また,歯科医師によって重度歯周炎罹患歯の抜歯基準は異なるため,治療計画の内容によってステージが変動するということも現実には起こりうると考えられる.図3-1-6 治療計画において,抜歯適応の重度歯周炎に罹患している予後不良歯(hopeless teeth)は,歯周炎による喪失歯数に含まれる.テージⅠ度歯周炎一般開業医・歯科衛生士【歯周基本治療】80歯周炎によって既に喪失している歯 2本歯周炎によって抜歯予定の歯 3本【歯周外科治療】歯周病専門医歯周炎が進行しているので3本の歯を抜歯しますステージⅢ重度歯周炎歯周炎による喪失歯5本ステージⅣ【補綴・矯正治療】専門医の連携ステージⅣ超重度歯周炎日本の新分類にも対応! 「歯周病の新分類」読本ステージⅡ中等度歯周炎歯周炎による喪失歯数“歯周炎によってすでに喪失している歯”と“歯周炎によって抜歯予定の歯”の合計でステージを診断する歯周炎による喪失歯数によってステージは決定されるのか?
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