れ、フォローアップ期間中は、すべての被験者に対して、看護師と介護士が毎食後に歯ブラシのみを用いて(歯磨剤は不使用)、口蓋、口腔粘膜、舌背を含めて約5分間ブラッシングを行った。また、ポピドンヨードを用いた咽頭部の清掃も一部の患者に行われた。義歯を使用している163名には、義歯の清掃も毎日行われた。 実験群においては、歯科医師または歯科衛生士が、プラークと歯石の除去を含む専門家による口腔ケアを必要に応じて週に一度行った。フォローアップ期間は2年間だった。腋窩体温の測定が1日に2度行われ、37.8度以上の期間が2年間で合計7日以上あった場合に発熱が起こったとされた。観察期間の最初からフォローアップ中、歯を有する患者にはプラークスコア(GreeneとVermillionのDebris Index)の測定を行い、認知症の程度やADLも記録された。主な結果 研究期間中、実験群において、発熱、肺炎、死亡の発生率が対照群と比較して有意に減少した(図1)。また、口腔ケアは歯を有する場合でも無歯顎の場合でも有効だった。ADLや認知機能は口腔ケアにより改善する傾向が見られた。また、プラークスコア(GreeneとVermillionのDebris Index)は、対照群と比較して、実験群において改善が有意に多く見られた。72PART2 イマココ!がわかる 口腔×全身疾患のエビデンス編Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, Mukaiyama H, Okamoto H, Hoshiba K, Ihara S, Yanagisawa S, Ariumi S, Morita T, Mizuno Y, Ohsawa T, Akagawa Y, Hashimoto K, Sasaki H, Oral Care Working Group. Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes. J Am Geriatr Soc 2002;50(3):430-433. PMID 11943036研究目的 口腔ケアにより、介護老人施設に入居する高齢者の肺炎発症率を減少できるかどうかを調査すること。研究対象 国内の介護老人施設11ヵ所に入居する高齢者で、過去3ヵ月間、機能的な症状や認知障害の状態が変わらず、感染や発作等の急性症状を起こさなかった417名。その多くは脳卒中や高血圧、不整脈、心筋梗塞の既往があったり、糖尿病、胃潰瘍などの慢性疾患をもっていた。また、わずかな認知症を起こしている者もあった。経管栄養の者はいなかった。研究方法 肺炎の診断基準は、胸部のエックス線写真で新たな肺浸潤が見られた場合と、咳、37.8度を超える発熱または自覚的な呼吸困難があった場合とされた。51名はフォローアップ期間中に肺炎以外の原因で死亡したため、研究から除外された。残った366名のうち、184名(平均82.0歳)が実験群、182名(平均82.1歳)が対照群にランダムに割り付けられた。 研究開始前に健康診断と胸部のエックス線撮影が行わ前ページの年表から、これまでの常識が変わるきっかけとなった文献をピックアップして紹介します。口腔ケアにより、介護老人施設に入居する高齢患者の肺炎が減少するPick up1ココがターニングポイント! 気になる文献を紹介相反する研究結果が報告されているが、どのように解釈すべきか?
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