ドクター関野のエビデンス・アカデミア
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16PART1 エビデンスで伝える! メインテナンスの大切さ編*オッズ比:ある事象が起こる確率を起こらない確率で割った値。Matuliene G, Pjetursson BE, Salvi GE, Schmidlin K, Brägger U, Zwahlen M, Lang NP. Influence of residual pockets on progression of periodontitis and tooth loss:results after 11 years of maintenance. J Clin Periodontol 2008;35(8):685-695. PMID 18549447 動的治療(APT)後に残存したプロービング時の出血(BOP)とプロービングポケットデプス(PPD)5mm以上の部位が、その後の歯周炎の進行と歯の喪失に及ぼす影響を調査すること。 1978~2002年に、スイスのベルン大学の歯周病・固定式補綴科で教育を受けた大学院生による歯周治療を受け、APT後3~27年(平均11.3年)のメインテナンス継続者で、ベースライン(以下BL)時に14~69歳の患者172名。 研究対象者の治療前(T0)、APT後(T1)、メインテナンス時(T2)に、全顎のエックス線写真撮影と歯周組織検査(歯数、インプラント数、PPD、歯肉退縮、臨床的アタッチメントレベル[CAL]、BOP)が行われた。歯周炎の進行は、「T1とT2の間に3mm以上のアタッチメントロスが生じた場合」と定義された。 得られたデータについて、歯面単位、一歯単位、患者単位で分析が行われた。多変量解析により、各リスクファクターと歯周炎の進行または歯の喪失との相関が計算された。 対象者の48.8%が年に2回、34.5%が年に3~4回メインテナンスを受けていた。PPD5mm以上の部位は、T1(APT後)においては2.9%の部位に見られ、T2(メインテナンス時)では4.3%に増加していた。PPD5mm以上の部位は、T1では1人平均4.1部位、T2では5.4部位だった。また平均BOP(全顎の平均出血スコア:FMBS)はT1で18.7%、T2で22.6%だった。歯面単位の分析 歯面単位では、T1時にPPD7mm以上の歯面を有していた歯は、T2の時点でその63.5%が喪失し、6mmでは30.7%、5mmでは21.7%、4mmでは13.7%だった。また、もっとも深いPPD7mm以上の歯の55.3%、6mmの歯の22.2%、5mmの歯の17.1%、4mmの歯の8.7%がT2時点で喪失していた。さらに、BOPが見られた場合は、見られなかった場合よりも歯の喪失が多くなる傾向があり、歯面単位の分析では、N数が少なかったPPD6mmの場合以外、一歯単位の分析ではPPD4mmの場合に統計学的有意差が見られた(図1)。患者単位の分析 患者単位では、FMBSが30%以上の場合、歯を喪失するオッズ比*は2.2で統計学的に有意だった。また、SPTの継続年数、歯周炎の重症度も歯の喪失に有意に影響していた。マルチレベル(1歯単位と患者単位を混合したモデル)での多変量解析では、最大PPDが5mm以上、2度以上の根分岐部病変、最大CAL7mm以上の場合が歯の喪失に有意に関係していた(表1)。そのなかでSPT継続期間が10年以内の患者では、最大PPD7mm以Pick up1残存したポケットが11年間のメインテナンス中の歯周炎の進行および歯の喪失に及ぼす影響について研究目的研究対象研究方法主な結果PPDとBOPは歯の喪失のリスクファクターとなり、細菌学的検査と同様、予後の進行が予測できる

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