ーーーーー図8-5 口腔内装置(OA)の種類とその特長と課題.一般的に,SRBD治療のためのOAには,下顎を前突させた状態を終夜維持することで気道の狭窄を防ぐMADと,舌を前方位置に終夜保持することで舌の沈下を防ぐ舌牽引装置(Tongue Stabilizing Device)がある.また,MADは上下一体型と上下分離型に大別される.上下一体型は,上下MADが強く固定されており,閉口を促し鼻呼吸を促進することができるという特長がある.しかし,上下MADを接合する即時重合レジン部は破損および変色しやすく,MADの上下位置関係の突出量の微調整が難しいという課題点がある.上下分離型は,上下顎が分離しているため開口およびある程度の側方運動が可能である.そのため,タイプにより,睡眠時ブラキシズムの習慣のある患者にも使用することができる.またMADの上下位置関係の調整が容易であり,ミリ単位で位置調整可能なタイプもある.舌牽引装置は,舌を前方位置に保持する装置で,無歯顎患者や歯列矯正治療中の患者,MADを使用できない患者に対し利用可能である.しかし,装着の不快感と審美性の悪さによりアドヒアランスが低いことと,SRBDに対する治療効果が不明瞭であるという課題がある.第8章 睡眠歯科治療計画の立案と決定・チェアサイドにおけるMADの上下位置関係の調整が容易・MADの上下位置関係はストラップを変更することにより1mm単位で調整可能・側方向への動きがスムーズ・睡眠時ブラキシズムの患者に適用となる場合がある・内面がソフトタイプのため,歯への違和感が少ない・側方向への動きによりストラップが伸びてしまう可能性がある・下顎の臼歯部が欠損している場合には維持力が不足する場合があるEMSタイプAVANTサイレンサー・チェアサイドにおけるMADの上下位置関係の調整が容易・MADの上下位置関係はストラップを変更することで1mm単位で調整可能・薄型のため口腔内スペースの小さい患者にも適用できる・上下が色違いでわかりやすい・薄い部分があり破損しやすい・側方への強い力でストラップが伸びたり破損する可能性がある・下顎の臼歯部が欠損している場合には維持力が不足する場合があるHerbstタイプHerbst・チェアサイドにおけるMADの上下位置関係の調整が容易・MADの上下位置関係は金属バーの長さを変更することにより調整可能・外筒,内筒の二重構造の金属バーにより下顎を安定して前方位に保持できる・外筒,内筒に程よい遊びがあり,ある程度の側方運動も許容する・頬側の金属バーによる違和感を覚える可能性がある・側方への強い力により装置本体とコネクターの結合部が破損する可能性がある・金属バーにより頬側粘膜が損傷する可能性がある上下分離型DorsalタイプFLEX・チェアサイドにおけるMADの上下位置関係の調整が容易・0.1mm単位で,MADの上下位置関係が調整できるため,正中のズレや下顎の位置の微調整等が可能・頬側の違和感が少ない・内面がソフトタイプのため,歯への違和感が少ない・側方への強い力で頬側のフィンが破損する可能性がある・他のMADに比べ頬側の厚みが厚く違和感を覚えることがあるTAPタイプTAP・チェアサイドにおけるMADの上下位置関係の調整が容易・MADの上下位置関係は前歯部のヒンジの長さを変更することで調整可能・前歯部にコネクターがあり頬側にバーやストラップがないため狭い口腔内にも適用できる・前歯部への負担が強い・舌側フックにより舌感が悪い・側方への強い力や無理に開口することでフックを破損する可能性がある舌牽引装置・舌を前方位置に保持する・無歯顎患者,歯列矯正治療中の患者,MADを使用できない患者等に対し利用可能な場合がある・不快感と審美性の悪さによりアドヒアランスが低い・睡眠時無呼吸に対する治療効果は,まだ不明瞭である117
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