ひとつではない、噛める総義歯の姿
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72ケースプレゼンテーション1.本法が目指す義歯の概念 筆者の義歯製作概念は、深水皓三先生と堤 嵩詞歯科技工士の奨励する1、フラットテーブルを付与した治療用義歯を使って最終義歯を製作することである。そして、義歯製作過程(表1)の中で最終印象材には義歯床用短期裏層材Visco-Gel(Dentsply Caulk,エーピーエス)を用い、Gerberの咬合理論を採用して咬合関係を付与する点も特徴的である。 この治療用義歯を用いた方法により、最終義歯の調整がかなり少なくなることは臨床的事実だと思う。義歯製作をする上で、機能印象を行っても最終的に義歯が完成してから痛みが出たり、義歯が安定しなかったりして、義歯調整を何度も行う経験をする歯科医師は少なくないことから、この問題を解決するには、治療義歯を使った義歯製作法が筆者は最適だと考えている。 治療用義歯は、堤 嵩詞氏の言葉を借りるならば、その治療過程において診断用や訓練用・動的機能印象用そして最終義歯製作後の予備義歯などに活用できる義歯である。治療用義歯を用いて正しく処置を行うことで、最終的な義歯を予測することができる2、3。 治療用義歯の段階で、噛み合わせと粘膜の関係を一体として義歯による痛みを除去することは、義歯の咀嚼時の安定に繋がる。また、義歯内面に敷かれたCoe-Soft(GC America、口腔内リベース材料)によって粘膜面が活性化されると同時に、Coe-Softによって研磨面への適切な形態付与も行える。 治療用義歯によって不定愁訴の改善後、Gerber理論3のもとに力学的に有利な咬合関係が再現できる考えに基づいたCondylator咬合器(Condylator Service,リンカイ)上でCondyloform人工歯(Condylator Service,リンカイ)を配列する。 Condylator咬合器は、咬合器の顆頭部が顎関節の形態を模したデザインとなっており、そのことにより顎関節の動きをメカニズムとして三次元的な下顎運動を再現し側方運動・ベネット運動・後方運動を加え、平衡側の早期接触を生じにくくすることができる咬合器である。 Condyloform人工歯は、顎関節と下顎頭と同様の動きを可能とするために、乳鉢と乳棒の原理によってデザインされたもので、どこからでも乳棒が乳鉢の中心へ入り込むように人工歯も早期接触を最小限として中心咬合位へ導くことができる(図1)。 また、Gerberが提唱したレデュースドオクルージョン4を用いて不利な顎堤条件にも対応するように、咀嚼運動で発生する咬合圧が顎堤に垂直に加わるように積極的に調節彎曲を与えている、片側咬合時における食物の切断・破断時の安定性が得られ、咀嚼運動時の義歯安定が優先される。 対顎関係や顎堤の吸収状態においても、それぞれ4フラットテーブル・治療用義歯によって形態と機能を回復する義歯製作須山譲氏

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