歯科インプラント治療のリスク度チェックとその対応
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683 骨粗鬆症と歯科インプラント治療骨粗鬆症と歯科インプラント治療永原國央 朝日大学歯学部口腔病態医療学講座インプラント学分野Chapter5代謝疾患331どのような病気か2骨粗鬆症のリスクと初診時にチェックすること 骨組織を構成しているものは,無機質が40~50%,有機質が29~35%,残りは水である.無機質はリン酸カルシウムという結晶からつくられており,その重量中の3分の2がカルシウムである.カルシウムは人体に必須の元素であるため,食事からのカルシウムが体内に吸収されなかったり,食事として摂取できていなかったりすると,骨などに貯えられているカルシウムが血中に放出され,一定の血中濃度を維持しようとする. 骨粗鬆症では,何らかの原因で全身的なカルシウ 骨粗鬆症の発症でもっとも多いのが,閉経後あるいは高齢にともなって発症する原発性骨粗鬆症である.そのため,初診時には,女性の場合,問診事項に閉経の有無,閉経時の年齢を記載してもらうようにしなくてはいけない.閉経後の患者においては要注意である.ムの低下により,骨に貯えてあるカルシウムが放出されることで,骨をつくっているリン酸カルシウム結晶がなくなってしまう.そのことが原因で,骨が脆くなり,骨折を起こしてしまう.骨折を治すには,骨折した部位に新しい骨が形成されてこなければならないが,骨粗鬆症では骨のカルシウムが低下していることで,この反応が起こらなくなっている. 埋入されたインプラント体周囲での骨接合の獲得および骨接合の維持に重要な骨のリモデリング反応においても同様のことが起こる(図1).インプラント体インプラント体インプラント体インプラント体周囲の圧迫により骨吸収が起こり,その部位は血液で満たされる.血液内に存在する単核の貪食細胞から分化した破骨細胞が骨吸収を始める.骨芽細胞のはたらきにより骨組織形成がはじまり,もとの大きさまで修復する.インプラント体歯槽骨皮質骨様構造をもつ骨組織歯槽骨 また,続発生(二次性)骨粗鬆症に関連する疾患等のチェックも必要となる.甲状腺疾患,性腺機能不全症,クッシング症候群,壊血病,ステロイド服用,抗がん剤投与,関節リウマチ,糖尿病,肝疾患,透析等の内容でチェックされた場合は,骨塩量の低下が疑われる(図2)1.図1 インプラント体表面での骨のリモデリング.骨粗鬆症は,その病態が「骨量の減少,骨微細構造の崩壊,脆弱性の亢進と脆弱性骨折の増大をきたす疾患」と定義されているため,骨リモデリング活性の低下,骨形成活性の低下が考えられる.このことが,本図に示すインプラント体表面での骨のリモデリングサイクルが正常に回転せず,吸収のみが起こりやすい状況となるため,インプラント体との骨接合が得られなかったり,骨接合を維持するのが困難となる.

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