歯科インプラント治療のリスク度チェックとその対応
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121 高血圧症と歯科インプラント治療高血圧症と歯科インプラント治療松浦正朗1)2) 1)福岡歯科大学口腔医療センター 2)福岡歯科大学咬合修復学講座口腔インプラント学分野Chapter1循環器疾患111どのような病気か 高血圧は,血管壁の変化に起因する全身の血管床容積の減少と血管内を流れる血液の総量の増加により,血管を押し広げる圧が高くなった病気である.すなわち,血圧は心拍出量×末梢血管抵抗で表され,拍出量は血管内を流れる総血液量,末梢血管抵抗は血管床容積と同じと考えられる. 全身に存在する血管内腔の総容積は,血管自体が拡張・収縮を繰り返しているので,その運動範囲が減少したことで起こるものと,血管内腔に何かが沈着して狭くなったことで起こる場合がある. 一般的に,日本では約4,000万人もの人が高血圧に罹患していると推定される.その内の90%以上が本態性高血圧で,遺伝と生活などの環境因子が複雑に絡み合って発病すると考えられ,40歳以上の成人に多い.残りの10%足らずが腎障害や内分泌系の異常によって血圧が高くなった二次性高血圧で,10~20歳代に多い. 本態性高血圧の主たる原因は,①腎でのナトリウム代謝異常(食塩過剰摂取),②レニン,アンジオテンシン(RA)系の活性化(血管収縮),③交感神経系(sympathetic nervous system:SNS)の活性化,④肥満・インスリン抵抗性,の4つといわれている.2高血圧のリスクと初診時にチェックすること 初診時の問診で高血圧の既往があることが判明した場合は,それまでに治療を受けたことがあるか,その内容と現在の血圧がおおよそどれくらいかを聴取する(図1).完治しており血圧が正常範囲(収縮期130mmHg未満,拡張期85mmHg未満)であれば“リスクなし”と判断する.しかし,加療中あるいは加療していないで血圧が高い,さらに合併症を併発している場合は,“高いリスクあり”と判断する.ちょうどその中間で,加療をしながら正常の血圧を維持できている場合は,“中等度のリスクあり”と判断する.高血圧の既往がないと答えた場合でも必ず血圧測定を行う.中年以上では本人の申告がなくても高血圧である可能性がある.3歯科インプラント治療に対して与える影響と対応1)歯科インプラント治療は可能か 高血圧のみであれば可能であるが,図1に示すリスク度チェックをしっかりと行う.また,多くの場合が高血圧のみではなく合併症をともなっており,それぞれの疾患のリスク度に従わなくてはいけない.2)歯科インプラント治療に対するリスク度 高血圧のみの場合リスクは“中等度”と考える.

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