歯科インプラント治療のリスク度チェックとその対応
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歯科インプラント治療は,ブリッジ(固定性義歯)あるいは義歯と同じ補綴治療の一処置方法として多くの臨床家により施術されています.しかし,一般的歯科治療に必要な咬合,歯の切削,予防処置などは,歯科医師としての経験と知識により,どのような症例にも対応し治療することができますが,手術をともなう歯科インプラント治療では,患者の全身的状態を診査し,そのリスク度をあらかじめ診断しておかなければ,突然の状況変化に対応できなくなって大きな医療事故につながります.また,せっかく埋入しても,全身的状態の影響によるインプラント体と周囲骨組織との骨接合の獲得や維持が困難で,早期に脱落するというトラブルを招くこともあります.この全身的状態を把握するということは,それまでの歯科医療の現場においては,必ずしも重要ではありませんでした. 歯科インプラント治療は,その予知性の向上により義歯による咀嚼障害,審美障害などを克服するための優れた治療法となり,患者のQOL向上に大きな役割を果たすものとなったこともあり,治療を希望する患者数が増加してきています.しかし,その反面,歯科インプラント治療を受けたことで障害が残ったり,最悪,死亡に至ったりした症例が報告されています.このような状況をふまえ,歯科インプラント治療に対して,というより,施術する歯科医師に対して「安全・安心」という言葉と,それに基づく実際の治療が強く求められるようになっているのです. 日本においては,65歳以上の人口の総人口に占める割合が23%を超え1,超高齢社会に突入したことで,生活習慣病と称される慢性疾患を有している患者の占める割合も増加しています.平成18年の厚生労働省の推計2によると,高血圧症有病者約3,970万人,高脂血症有病者約1,410万人,糖尿病有病者約820万人という高い数値になっています.これら生活習慣病の有病者ならびにその予備群が増え続けている現状から,歯科に来院するとくに中高年患者の多くは何らかの全身的な疾患を有していると考えられます. 「安全」な歯科インプラント治療を行うにあたっては,診査・診断,治療計画の立案,手術,上部構造物作成,メインテナンスといった治療の流れが,妥協することなく確実刊行にあたって

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