歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本2
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■第1章 フッ化物応用■第1章第2章第3章第4章第5章第6章第7章第8章第9章第10章第11章第12章第13章第14章第15章15説明のPOINT 厚生労働省が定めた「フッ化物洗口の推進に関する基本的な考え方」には「フッ化物洗口と他の局所応用法を併用しても,問題はない」とあります。また、「水道水にフッ化物が添加されている地域のデータを基にした疫学調査等によって、フッ化物と骨折、がん、神経及び遺伝系の疾患、アレルギー等の疾患との関連等は否定されている」と明記されています。つまり、使用後に口に残ったフッ化物を摂取しても、急性および慢性の毒性が発現する量には達しないということです。覚えておこう!〈引用文献〉1.荒川浩久(監修).別冊歯科衛生士 プラークコントロールのためのホームケア指導 口腔リスクとライフステージに応じた最新処方.東京:クインテッセンス出版,2000.2.荒川浩久.フッ化物配合歯磨剤の現状と臨床応用.日本歯科医師会雑誌. 2007;60(3):218-28.3.厚生労働省医薬・生活衛生局長.薬用歯みがき類製造販売承認基準について.https://www.mhlw.go.jp/content/000797783.pdf(2023年6月1日アクセス)4.ISO. Dentistry—Dentifrices—Requirements, test methods and marking. ISO. 11609:2017.https://www.iso.org/standard/70956.html(2023年6月1日アクセス)5.Conti AJ, et al. A 3-year clinical trial to compare efficacy of dentifrices containing 1.14% and 0.76% sodium monofluorophosphate. Community Dent Oral Epidemiol. 1988;16(3):135-8.PMID 3288434口に残るフッ化物はわずか ブラッシング後、フッ化物配合歯磨き剤は吐き出してうがいをしますが、一部は口に残ります。3~5歳児では使用量の15%が残りますから、フッ化物濃度500ppmの歯磨き剤0.25g使用で0.019mgのフッ化物が残ります。たとえ1,000ppmの歯磨き剤を使用しても、2倍の0.0375mgですから急性毒性の心配はいりません。それでも心配な場合、体内に取り込まれにくいフッ化物「モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)」を使用している歯磨き剤を使うのもよいでしょう。 つぎに、4~5歳児がフッ化物洗口を行う場合を想定しましょう。250ppmの洗口液5mLには1.25mgのフッ化物が含まれています。洗口後に口に残る15%は0.19mgですから、同じく心配いりません。 (財)日本中毒情報センター9による急性中毒発現量は5~10mgF/kg(体重1kgあたり5~10mgのフッ化物を一度に摂取する)、消化器症状の発現は3~5mgF/kgとされています。一方、推定中毒量(治療や入院などの処置を必要とする量)が5mgF/kg(体重)、命にかかわる最小量(フッ化ナ 6.日本歯磨工業会.高濃度フッ化物配合薬用歯みがきの注意表示等について第二版(日本歯磨工業会).https://www.hamigaki.gr.jp/hamigaki1/pdf/fusso_t200821_jdma.pdf(2023年6月1日アクセス) 7.一般社団法人日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会(編).フッ化物応用の科学 第2版.東京:口腔保健協会,2018. 8.眞木吉信(編).フッ化物をめぐる誤解を解くための12章+4つの新トピックス.東京:医歯薬出版, 2018. 9.公益財団法人日本中毒情報センター.医師向け中毒情報 概要 フッ化物.https://www.j-poison-ic.jp/system/pmasters/view2/%3Finfoid%3DO44800(2023年6月1日アクセス)10.厚生労働省.e-ヘルスネット[情報提供].フッ化物の急性中毒量.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-008.html(2023年6月1日アクセス)11.瀬川真紀,北原 稔,堀内香代子.歯ブラシを用いたフッ化物ゲル歯面塗布法 今、伝えたい私達の実戦的ノウハウ.歯科衛生士. 1995;19(10):37-44.繰り返しの使用も問題ない 繰り返し使うという点ではどうでしょう。4歳児が1,000ppmのフッ化物配合歯磨き剤を1日3回、フッ化物洗口剤を1日1回使用するとして、1日に摂取するフッ化物量は0.3mgになります。歯に斑点や染みができるフッ素症が生じる恐れがあるのは、3~5歳児(基準体重16.7kg)で1日に1.67mg以上のフッ化物を摂取し続けた場合ですから、歯のフッ素症が生じるという心配はいりません7。 一方、高濃度のフッ化物歯面塗布は年に数回のため、急性毒性に配慮すればよいでしょう。日本の塗布剤のフッ化物濃度は9,000ppmで、1mL(1g)に9mgのフッ化物が含まれています。そこで、体重10kgの1歳児がそのすべてを飲み込んだとしても、体重1kgあたり0.9mgですから手技に忠実に実施された場合の安全性は確保されています8。トリウムの死亡最低既知量)が71~74mgNaF/Kg(体重)とする見解もあります10。同じくこれには達しません。3種類のフッ化物局所応用をすべて利用してもフッ化物の過剰摂取にはなりません簡単に説明するなら……詳しく説明するなら……フッ化物局所応用は安全性が確保されている

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