歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本2
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■第1章 フッ化物応用■12説明のPOINT 日本で行われているフッ化物応用は「局所応用」といって、歯や口の中に直接フッ化物を作用させ、むし歯を予防する方法です。方法は大きく2つにわかれます。歯科医院でときどき高濃度のフッ化物を歯面に塗布する方法と、自宅や学校などでフッ化物洗口をしたりフッ化物配合歯磨き剤を使ったりして低濃度のフッ化物を頻回に応用する方法です。高濃度フッ化物は歯を強くし、低濃度フッ化物はむし歯になりかかったところを再石灰化によって治してくれるため、年齢に応じて組み合わせることをおすすめします。覚えておこう!歯科医院でしかできない高濃度フッ化物塗布! 高濃度フッ化物は、日常使用する歯磨き剤などに含まれるフッ化物の約10倍の9,000ppmで、歯科専門職しか使用が認められていません。高濃度のフッ化物塗布剤を歯面に3~4分間塗布することで、歯の表面につくられたフッ化カルシウムからフッ化物イオンが放出され、歯の結晶であるヒドロキシアパタイトを酸に溶けにくいフッ素化アパタイトに変えます(酸抵抗性の向上)。しかし、この反応は歯の表面に限られるうえ少しずつ消失しますので、定期的に歯科医院を訪れて、繰り返し塗布を受けましょう。 塗布後、唾液は飲み込んでも構いませんが、30分間は飲食や洗口をしないほうがフッ化物が安定します。また、リン酸酸性フッ化物(APF)で塗布した日(とくに塗布直後)は、歯に色がつくのを防止するために、カレーやウーロン茶など色素の強い飲み物や食べ物の摂取を控えましょう。 フッ化物応用後に、除去しきれなかったプラークに取り込まれるフッ化物の作用も見逃せません。まず、プラーク内でフッ化物は、タンパク質やカルシウムと結合して安定化します。ところが、プラーク中で産生された酸によって結合が解かれ、Fイオンが放出します。このFイオンが酸による脱灰抑制とう蝕になりかかった歯面の再石灰化の促進にはたらいてう蝕の発生を自宅などでは低濃度フッ化物を組み合わせて使おう 日常使用するフッ化物配合歯磨き剤や洗口剤には225~1,500ppm程度の低濃度フッ化物が含まれています。この場合、応用後に歯表面に残ったフッ化物が、歯が溶けるのを抑える作用(脱灰抑制)と再石灰化を促進します。しかし、多くは唾液によって洗い流されてしまいます。 そのかわり、口腔の粘膜に残ったフッ化物が少しずつ放出されて、歯表面の脱灰抑制と再石灰化の促進を継続します。粘膜上に保持されたフッ化物もいずれは消失しますので、フッ化物洗口は1日に1回、フッ化物配合歯磨き剤は1日に2回以上使用するとよいでしょう。 このように、高濃度と低濃度フッ化物とではむし歯予防作用が異なるので、両方とも取り入れましょう。防ぎます。さらに、フッ化物はプラーク中の細菌のはたらきを弱めて、プラーク形成のもとになる菌体外多糖体の合成を抑制するとともに酸産生も抑制してくれます。切り離して使える! 巻末とじ込み 患者説明用シート3種類のフッ化物応用の特徴をまとめました。さまざまな濃度のフッ化物を組み合わせて使う重要性を説明する際にお役立てください。日本で利用できるフッ化物応用の特徴を確認し、きちんと説明できるようにしましょう簡単に説明するなら……詳しく説明するなら……フッ化物は異なる濃度による複数の方法を取り入れることで効果が増す

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