審美インプラントの治療戦略
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インプラントおよび上部構造と残置歯根片の咬合面観でのインプラントと残置歯根片の抜歯窩内でのインプラントと残置歯根片のStandard SS位置関係位置関係位置関係2. Pohl S, Kher U, Salama MA, Buljan M. The socket shield tech-nique with proximal extensions for single-rooted teeth. Int J Esthet Dent. 2022 Nov 25;17(4):424‐35.LSS91アバットメントの着脱の繰り返しは、辺縁骨の吸収を惹起するか? Vatėnasら1は、アバットメントの装着が一回のみの場合と複数回着脱を行った場合とを比較したメタ分析で、アバットメントの着脱の繰り返しは辺縁骨の吸収に影響するとしており、アバットメントを初めて接続する時に最終的に用いるアバットメントを接続する“One abutment, One time”のコンセプトは有用であると示唆している。本症例のようにデジタル技術を活かした手技を用いることで、このコンセプトも容易に達成できる可能性がある。しかし、辺縁骨の吸収は埋入深度や粘膜の厚みなどの要素も大きく影響することを忘れてはいけない。Proximal Socket Shieldはインプラント間の骨と軟組織の保存に有効か? 前歯部インプラントの垂直的な埋入位置(埋入深度)は、唇側骨を基準に設定する必要があるが、その結果として隣接面部においては骨縁下深くにプラットフォームが位置することになる。インプラントの隣に天然歯が存在していれば、その隣在歯の歯根膜が骨の高さを維持してくれるので、歯間部軟組織も維持される。しかし、本症例のように、既存のインプラントに隣接する歯を抜歯して新たにインプラントを埋入すると、インプラント間の骨はプラットフォームの高さまで吸収し、インプラント間の軟組織も消失する。このような場合に、SSTの変法として隣接部まで歯根片を残置することで、隣接部の硬・軟組織の吸収を防ぐ手技が提案されている。近遠心のラインアングルを越えて歯根片を残置するC-shaped Socket Shield(CSS)、近遠心のどちらか一方のラインアングルを越えて歯根片を残置するL-shaped Socket Shield(LSS)、隣接部の歯根片のみを残置するProximal Socket Shield(PSS)の方法があるが(R10-10)、残置する歯根の状態や抜歯窩の形態を考慮して選択する2。いずれも、残置した歯根の歯根膜が隣接するインプラントとの間の骨を維持し、インプラント間の軟組織も維持され審美的に良好な結果が得られる。参考文献1. Vatėnas I, Linkevičius T. One abutment one time vs. repeatable abutment disconnections in implants, restored with cemented / screw retained fixed partial dentures:Marginal bone level changes. A systematic review and meta-analysis. Stomatologija. 2021;23(2):35‐40. R10-10 SSTにおける残置歯根片の形成法の違いによる分類。(文献2より引用・改変)Standard Socket Shield :通法は近心ラインアングルから遠心ラインアングルまで歯根片を残置する。C-shaped Socket Shield(CSS):近遠心のラインアングルを越えて歯根片を残置する。Proximal Socket Shield(PSS):隣接部の歯根片のみを残置する。L-shaped Socket Shield(LSS):近遠心のどちらか一方のラインアングルを越えて歯根片を残置する。Chapter 2 これから抜歯を行う部位への治療戦略CSSPSS理論背景と論文紹介

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