第4章においては犬歯誘導を妨げる咬合様式を解説し,永久歯列完成期からの矯正では多くの症例において犬歯誘導を確立することが難しいことを述べた.また,第5章においては犬歯誘導確立のための咬合誘導の治療方針を乳歯列期,切歯交換期,側方 本章では14症例を提示した.筆者の咬合誘導は早ければ乳歯列期から,その多くは切歯交換期から,遅くとも側方歯群交換期に行っている(図1).第二大臼歯が萌出し,永久歯列が完成する14〜15歳まで診るのは当然として,20歳くらいまでは定期的に経過観察を行っている.どんな症例も決して1つの初期症状で終えることはなく,成長発育とともにさまざまな問題が噴出してくる.それらにどのように対処していったかを見ていただきたい. 咬合誘導の最大の問題点は乳歯列期や切歯交換期の初診時の状態だけでは将来がまったく予想がつか歯群交換期の3期に分け解説した.本章においては,犬歯誘導の確立を妨げるさまざまな不正咬合に対し,どのように咬合誘導を実践していったかを紹介していきたいと思う.ないことである.そのため,矯正歯科専門医の多くは,ほぼ確実に診断ができる混合歯列後期や永久歯列完成期からの矯正を推奨している.しかし,永久歯列完成期からでは犬歯誘導を確立することが難しいため,筆者はほとんどの症例において切歯交換期からの咬合誘導を行っている. 多くの矯正歯科専門医に批判を受けやすい長期間にわたる咬合誘導であるが,比較的短期ごとの定期通院(短期では1,2週ごと,通常では1か月,2か月,3か月〜6か月ごと)を行うため,う蝕管理が確実に行え,カリエスフリーの子どもたちを育てやすい. 金属修復物のない,CR充填以外,ほぼカリエスフリーで永久歯列を完成した子どもたちの歯を見ていただきたい.92chapter 61成長発育とともにさまざまな問題が出現する咬合誘導の問題点はじめに犬歯誘導確立のためのポイントをさまざまな咬合誘導臨床から学ぶ長期間にわたって咬合誘導を行う最大のメリット第6章犬歯誘導確立のための咬合誘導の実践
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