咬合誘導論
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◆広義の咬合誘導と狭義の咬合誘導図1 深田英朗先生の考えている咬合誘導の理念は,いわゆる広義の咬合誘導である. 咬合誘導は「出生から死に至るまでの咬合管理-総合咀嚼器官の健康維持と増進-」を究極の目的としていると言ったら信じるであろうか? 咬合誘導と聞くと小児歯科の範疇であり,出生時から成長発育期だけの学問であり臨床であると思っている歯科医師がほとんどではなかろうか(図1,2). 咬合誘導1〜3の原点は1951年に日本大学歯学部矯正科教授,岩垣宏先生と深田英朗先生1,2(図3)によって提唱された「保育歯科」4,1955年に発刊された『保育歯科学』5に始まる.「保育歯科」も「咬合誘導」も名付け親は深田先生で,名は変わってもそこに流れる深田先生の理念は同じであるといってもよい. 「歯牙の形成が始まる胎生35〜40日ごろから(註)3,永久歯咬合が完成するまでの長い間,歯,顎,顔はいくたの変化を重ねつつ発育成長する.その間これらが正しく,あるべき姿にあるか,いなかを見守り,またその間に,もしそれらの足なみが少しでも乱れることを発見したら,その因子を追及し,除去に最善の努力を払う.また,時として不幸にもみすごされたなんらかの原因でその発育の方向に狂いがあったなら,それらを可及的早期に正しい方向に位置づけることをしなくてはならない.要するに,以上のような努力のすべてをDenture guidanceと定義づけてはどうであろう.(中略)あらゆる小児歯科的処置は,正しい咬合への誘導のためであると言ってけっしていいすぎではない」 以上は,戦後の小児歯科の黎明期に深田先生によって発表された咬合誘導の定義である.その後,深田先生の発表された多くの文献を読み続けているうちに,咬合誘導の理念が小児歯科にとどまらないことに気づいた.10chapter 1咬合誘導(広義)正しい咬合への誘導のためのあらゆる小児歯科的処置・咬合誘導(狭義)不正咬合の早期発見・早期治療により正常な永久歯咬合を導こうとするさまざまな手段・う蝕治療~予防・歯内療法・歯周療法・歯冠修復・外科・食事指導・健康教育・他・保隙装置・スペースリゲイニング・歯の小移動・歯列弓の拡大・咬合調整・萌出異常の発見・萌出の誘導・筋機能訓練・口腔習癖の予防除去・他咬合誘導とは(深田:1963年小児歯科雑誌第1号第1巻)6はじめに第1章8029達成者に学ぶ:新 犬歯誘導の起源

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