この舌側弁の利点は,第二大臼歯遠心に切開を加えないため,切開線がすべて骨面上に設定でき(頬側弁でも抜歯前は切開線が骨面上になるが,抜歯後は抜歯窩による骨欠損できるため,切開線が抜歯窩をまたぐ形になる),頬側三角弁と比べると創の陥凹や裂開を未然に防ぎやすい点である(図12).また,剥離が一方向になるので,糸をかけて牽引しておくとアシスタントの補助なく術野を展開することが容易になる,抜歯創の被覆の際にフラップ調整がしやすい, 「縦切開を加えないほうが侵襲が少ないので術後経過が良い」という話(噂?)は聞いたことがあるかもしれない.実際には,その話には科学的根拠が存在しないのが現状である.そのうえで,「切開線がなどの利点もある(図13). しかし,この舌側弁は,ある程度歯冠が露出した症例では適応しにくく,主に完全埋伏あるいはわずかに歯冠が露出した症例が適応と考えられる4.また,Chapter3で示したように,頬筋の切開,頬動脈や顔面動脈の枝を損傷することによる術後の不快症状(腫脹,疼痛)が強く,QOLが下がることが舌側弁の欠点としてある.1本少なければその分,組織への侵襲は少ないかもしれない」と考えることはできる.手術の経験を積むにともない,より安全に,低侵襲にしていくという考えには賛成である.一方で,切開を減らすなど65Chapter4 下顎埋伏智歯抜歯の切開図11原則1〜3に則った形原則4に則って形を修正舌側三角弁6縦切開の是非
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