科学的根拠に基づいたビジュアル下顎埋伏智歯抜歯_NoLink
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 う蝕や周囲炎がない状態で智歯を維持することは非常に難しく,外科的に取り除かない限りは,とくに下顎智歯はいずれ爆発する“時限爆弾”のようなものである(可能性は低いが爆発しないこともある)1. また,米国口腔顎顔面外科学会は「年齢を経るごとに智歯抜歯の難易度と合併症の確率が高くなることを患者は事前に説明されるべきである」という声明を出している2.1)う蝕 智歯のう蝕に関するエビデンスを以下に示す.・智歯は通常17~24歳の間に萌出するため,25歳を過ぎると第二大臼歯遠心のう蝕罹患率が有意に高くなる3.・年齢により智歯のう蝕罹患率はさまざまで,24~80%と報告されている4~7.・口腔内に萌出もしくは半萌出している智歯をもつ中高年(52~74歳)の米国人2,003名の調査では,その77%にう蝕を認めた5.・半萌出,近心傾斜の智歯のう蝕罹患率は,遠心傾斜や垂直埋伏の智歯のそれよりも有意に高い3,8(図1).半萌出,近心傾斜や水平埋伏などに対する,いかにも食渣,プラークが溜まりやすそうなイメージは実際に正しいようだ.2)智歯周囲炎 智歯周囲炎に関するエビデンスを以下に示す.・下顎智歯周囲炎(この場合,5mmを超える歯周ポケット)の罹患率は,25歳以降には32%と,それ以前の16%の倍になる3.・59%の下顎智歯は,智歯周囲炎の既往のため抜歯となっているという研究がある10.・智歯を維持すること,とくに半萌出,近心傾斜した智歯を維持することは,智歯周囲炎のリスク増加と有意に関連している3(図2).28MEMO 半萌出,近心傾斜と水平埋伏智歯のう蝕罹患率は高く,25歳を過ぎると有意にう蝕罹患率が高くなる.図1う窩水平埋伏智歯のう蝕1う蝕と周囲炎,第二大臼歯歯根吸収に関するエビデンス

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