関する論文をまとめ,自身の研究データに加え多くの先行研究のレビューを行った2.以下にそのレビューの内容を一部示す(人種および性別によりかなりばらつきはある). 歯冠形成開始時期は,およそ12〜13歳である.また,歯根形成開始時期(Ri)は,12歳後半〜14歳前半にかけてとされている.歯根分岐部の形成(Rcl)は,13歳半〜15歳前半とされている.歯根は,15〜17歳頃にかけて最大長の半分の長さとなる(R1/2).歯根長が最大になり,根尖が半分閉鎖する(A1/2)のは16〜19歳にかけてだが,もっとも遅いもので平均して男性で22歳,女性で24歳とするトルコからの報告がある3.根尖の閉鎖(Ac)は平均19〜20歳とされるが,Levesqueは女性の90%のみが24歳までに根尖の閉鎖を認めたとし4,Nyströmらは女性は24.18歳までに97%が根尖閉鎖するとした5.また,多くの研究では,各ステージの平均年齢は男性(男児)のほうが女性(女児)よりも若いとしている.とくに,歯根完成(根尖閉鎖まで)は男性では24歳までにすべて完了していたが,女性では24歳までにすべてが完了しているわけではなかった4. これらからわかることは,「大多数において24歳までに下顎智歯は根尖閉鎖まで完了する」ということである.歯根が完成する前に抜歯をしたい場合や若年者における抜歯時期を決定するうえでの,1つの指標となるだろう.ⅱ)歯根の数 下顎智歯歯根の数については,さまざまな国・人種での研究がこれまで行われてきている.日本人,イラン人,韓国人,インド人,ブラジル人における研究すべてにおいて2根がもっとも多く,次いで1根,3根の順となっている6〜10(表1). 表1に示すように,数値にばらつきはあるものの2根の頻度がもっとも高いというのは,どの国(人種)でも同じようである.われわれにとって重要な日本人のデータでは(やや古いものではあるが),59%において2根(図2)で,これは韓国人における頻度と近い数値である.日本人における2根の割合は,おおよそ1根の2倍となっている.実際には,パノラマエックス線写真上で1根に見えるもの(もしくは不鮮明なもの)のなかでも,抜歯をしている最中に複根だと気づくこともある.つまり,パノラマエックス線写真では1根しか見えない場合でも,2根である可能性も捨てきれないのである.抜歯を行う際は,複数根だった場合の対策も考えておくほうが賢明だということが,このデータからもわかる.9Chapter1 下顎埋伏智歯抜歯にかかわる解剖と画像診断表1報告年著者1976藤田2012Kuzekanani2013Park2017Somasundaramインド人2018da Silva Sampieri ブラジル人人種日本人イラン人韓国人観察方法対象歯数不明不明抜去歯154CBCT214CBCT171パノラマ1,205エックス線写真1根2根30%59%21.0%73.0%37.9%56.5%12.9%84.2%1.5%98.3%3根11%5.5%1.9%2.3%0.2%下顎智歯の歯根の数の研究(人種別)
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